吸血鬼FANTASTICS！

幻の血 ページ20

「っ･･･！」

澤夏「ん？あ、ごめん！もしかして痛かった！？」

「い、いや、そういうことではなくて･･･」



澤さんの血を拭う姿がかっこよくて悶えたとか、恥ずかしくて口が裂けても言えない･･･。
それを感づかれたくない私は、なんとか話を逸らそうとする。



「そ、それより･･･、私の血どうでした？」

澤夏「あー、それなんだけど･･･」



そう言い淀む彼を見て、私は不安になる。



「あ･･･不味かったですか？」

澤夏「いや不味くはないよ！むしろすごい美味しいんだけど･･･」



何を躊躇っているのか、しばらく言葉を濁していた澤さんだったが意を決したのかようやく口を開いた。



澤夏「どうやら･･･。Aは“幻の血”の持ち主みたいなんだ」

「幻の、血･･･？」



当然渡航者の私が知るはずもないので、澤さんは“幻の血”の説明を始める。
澤さんの説明によると幻の血は全ての吸血鬼がこぞって飲みたがる究極の一品らしい。その匂いはどんな強い酒よりも酔い、その味は毒のように甘く至高の味と評されるほどで一口飲めば一瞬で喉の渇きが癒え傷もあっという間に治るのだとか。
しかし名前の通り滅多にある訳ではなく、幻の血を持って生まれてくる人間もほとんどいないらしい。



澤夏「まさか渡航者のAが幻の血の持ち主だとは思わなかったけど･･･。でも、これはちょっと厄介だな」

「そうなんですか？」

澤夏「ああ。人間を獲物としか見てない悪い吸血鬼もいるから、このことが広まればAを狙ってくるやつが出てくるかもしれない」

「それは･･･、マズいですね･･･」



そうなったら、最悪殺されるのかな･･･。



澤夏「･･･取り敢えず情報の漏洩を防ぐ為に、今はFANTASTICSのメンバーだけに伝えておくことにするよ。後、寝る前に風呂に入って血の匂いを落とした方がいい」

「･･･分かりました」



吸血鬼たちがこぞって飲みたがる幻の血･･･。私、大丈夫なのかな･･･。
これからの生活に不安を感じつつも、私は自身の血の匂いを落とす為澤さんに連れられて風呂場に向かっていった。

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