ビターチョコレートシンドローム 【HQ】

07 知らなくていいこと ページ7

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合宿二日目、
驚くほどに頭が働かなかった

トス自体はいつも通りであるものの、
頭が回らなくてどうしても木兎さんばかりにトスを集めてしまう


…頼りすぎてる、
働かない頭を無理にでも動かそうと、洗面所の蛇口から流れる水に
頭を思いきり突っ込む





『わたしね、今、付き合ってる人いるの』


何度も頭の中で反芻するあの言葉と情景

忘れようと頭をガシガシとタオルで拭くも逆効果で、
あの時の苦しそうな彼女の顔が忘れられない


洗面所へと向かう途中で持ってきた、
あの時の指輪を掌に置いたまま見つめる


昨日は目合わせてくれたのに、
今日は一回も合わせてくれなかったな…




「よォ、赤葦」

「黒尾さん、…」

後ろから不意に現れた黒尾さんに内心ビックリする

「お前、なんか今日木兎にトス集中してたけど、そういう作戦なの？」

「いえ、…ただ俺の頭が働かなかったせいです。」


あ、そう、と短く返事をして隣に立つ黒尾さんが、
俺の掌にあるそれを見た瞬間、一瞬驚いたような顔をしたが
すぐいつも通りの表情に戻った



「なあ赤葦、お前が持ってるソレ、何？」

と、黒尾さんがそれを指さす

「あぁ、指輪です。昔、好きだった子にお揃いをプレゼントしたんです」

「……それで？」

「いや、昨日再会したから告白しようとしたら、付き合ってる人がいるって言われて、」

「……Aだろ」

「なんで、知ってるんですか…」

少しの沈黙、隣にいる黒尾さんが一点を見つめる

「いや、同じのアイツも首にぶら下げてたなって、」

「あぁ、そっか。貴方のところのマネージャーだから解りますよね」

まあな、そう言った黒尾さんは来た道を帰ると思っていた矢先、


「なぁ、赤葦」

無表情で振り返った黒尾さんは、

「何ですか、？」

「事が複雑になる前に先に言っておくけど、」









「お前のその指輪のもう一個の持ち主は、俺の彼女だよ」

「…は、」

「、じゃあな」

それだけを言い残して去っていった黒尾さんに、
開いた口が塞がらない







…なんだ、黒尾さんだったのかよ
それだけで、もう事は十分複雑じゃん






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