13 抵抗できないもの ページ13
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あまりの懐かしさに、思わず時が戻ったように思えた
『…なにこれ?』
机の上に飾られた写真立てが視界に映る
それは、幼いころの京治くんと私が映っている写真だった
『ねえ、京治くん。これいつの間に…ってうわ、!』
ふと後ろにいる彼を見ようと振り返ると、
あまりの近さにびっくりして後ずさる
と、机に体がぶつかって避けることが出来なくなる
「Aちゃん、」
落ち着いていて、昔とはまるで違う彼の低い声が体の芯まで届く
…彼の顔が、見れない
『京治くん、私帰らなきゃ…』
そういって横からすり抜けようとしたとき、
彼に真正面から抱きしめられる
「ごめん、触れたい」
『ね、京治くん離して…』
小さく抵抗しても、離してくれなくて、
頭を彼の胸板に押し付けられる
『ねえ京治くん…私には鉄朗が、』
「…じゃあ、何で、」
「なんで思いきり、抵抗してこないの」
苦そうな彼の声が、脳内に響く
『なんでって…』
「本当に嫌なら、思いきり突き放してよ。」
「俺今、そんなに力入れてないから」
押し付けられた胸元から、彼の心臓の鼓動を感じる
___「大きくなったら、俺と結婚してくれる?」
あの日のこと、忘れたことなんてなかった
暖かくて、ドキドキして、でもどこか安心させてくれるような
どこまでも私を甘やかしてくれる、大人っぽいくせに
年下の彼は、私の初恋だったのだから。
『解らないよ…』
「え、?」
解らない、そのまんまの意味。
久しぶりに会った初恋の彼は、
ずっと私の事を想っていてくれて
でも、同時に今の彼を、鉄朗を失いたくもないの
…私は今、彼を失ったら誰にも埋められない心の穴が出来てしまう気がするんだ
『もう、解んない、京治くんも、鉄朗の事も…』
京治くんにしがみついて、溢れる涙を隠す
彼の服が、自分の涙がついて滲んでいく
「…泣かないでよ、俺も苦しいんだ」
そう言い、身体を少し離して私の顔を覗き込んだ彼の顔が
優しく、悲しそうに微笑んでいて、
「ごめん、奪おうとすること、許してね、」
誰に向けて行ったのかは、解らない
近づく彼の顔に、何もできなくて、
せめてものと込めた小さな力さえも失くして。
あぁ、私、今すごく最低だ。
優しい彼の、
昔とはまるで違う大人なキスで口を塞がれた瞬間、
自分の中で塞き止めていた溶けたチョコレートのような液体が、
溢れ出そうになった
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海(プロフ) - 青藍さん» 感想ありがとうございます!分身術、主人公に身につけさせておきますね!← ありがとうございます;;これからもよろしくお願いします! (2020年4月13日 1時) (レス) id: a056b6c2e9 (このIDを非表示/違反報告)
青藍 - クロぉぉぉぉ!赤葦ぃぃぃぃ!!どっちも推しだからどっちも幸せになってほしい…!! はっ!いっそのこと夢主ちゃんが分身すれば…!← これからも頑張って下さい!応援してます!! (2020年4月11日 18時) (レス) id: 2aeb894d27 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - かたつむり。(?)さん» ありがとうございます!切なくてドロドロなお話を書きたかったので伝わっていてとても嬉しいです;;更新少しずつではありますがこれからもどうぞ宜しく御願いします! (2020年4月11日 17時) (レス) id: a056b6c2e9 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - しかよる。さん» コメントありがとうございます!とても励みになります;;これからもどうぞご愛読宜しく御願います!^_^ (2020年4月11日 17時) (レス) id: a056b6c2e9 (このIDを非表示/違反報告)
かたつむり。(?)(プロフ) - あ"あ"切ない!!!胸が痛い!!!なんかどっちも好き!!切ない!!(二回目)いやもう、この作品が更新されたら秒でトンできてます...。本当に、これからも頑張ってください!!!めちゃくちゃ応援してます!!! (2020年4月10日 21時) (レス) id: 40246c291e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2020年4月7日 0時