ビターチョコレートシンドローム 【HQ】

01 約束 ページ1

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「大きくなったら、おれと結婚してくれる？」



ブランコと砂場しかないような小さな公園で、
ませたことを言った、幼いころの記憶



『いいよ、京治くんが、その時に迎えに来てくれたら、

私は京治くんのお嫁さんになる！』



すぐ傍で咲いていたシロツメクサで俺が作ってあげた花冠を頭に被り、
白いワンピースを着た彼女は、ふわりと笑う

夕日に照らされた、その幼いながらにして整った顔が綺麗で、
本当にドラマで見るお嫁さんのようだった



「これ、…約束のしるしね」

『ん、指輪？』

ポッケの中に忍ばせた、
いつしかのお祭りの屋台で売っていたおもちゃの指輪を
彼女の左手の薬指に嵌めてあげる

『わあ、綺麗！京治くんありがとう！』

ぱあ、と花を咲かせるように笑う彼女の笑顔がいつだって大好きで、

『京治くん、わたし京治くんと結婚するなら、あれしなきゃだよ』

「あれって？」

『誓いの、キス』

少し恥ずかしそうに、でもいたずら心を含ませた彼女が



「Aちゃん…、！」

『ごめん、私からしちゃった！』

チュ、と短く鳴り響いた音に、唇に残る感触
子供ながらの、可愛いキス

どきどきして、甘くて、全身が熱くなって

『ほんとうに結婚するときは、京治くんからしてね』

「……うん！」


それきり、近所に住んでいた彼女はいなくなってしまった、
引っ越してしまったのだ









「あかーし！トス上げてくれ！」

「木兎さん、これ以上やったら死にます…！」

「そんな簡単に死なねーから平気だ！」

あれから時は経ち、高校二年生になった

さほど遠いところに引っ越すわけではない、
同じ東京だからまたきっと会えるよと、
あの時言っていた彼女には、あれきり一度も会えていなかった



あの時に渡した指輪は、未だにキーホルダーにして持っている
きらりと、ぶら下げられたその指輪が光る

彼女と俺とを繋ぐ、唯一のモノ

「Aちゃん、」


あの頃の可憐な彼女ははどんな風に、変わったのかな

一つ上の優しい君との思い出に、キスに、いつまでも囚われたまま。




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