姉が1人 ページ3
流石は姉というべきか、叶にお財布を出させ、慣れた手つきでその彼の財布から万札を1枚取り出し、葛葉に、これで足りますか? と聞いてくる。
「いやっ、これじゃ多すぎるくらいですって!」
居酒屋の相場は、格安店でく、尚且つそこまで多く注文をしなければ、高くとも5000円あれば足りるものである。
Aが差し出した金額は、お釣りは取っておいて下さい、と言う割には多すぎる。
そういう訳で、受け取るのを拒否すれば、今度は手を握られ、半ば無理矢理万札を握らされる。
「叶が迷惑をかけた、その迷惑料ということで」
「いやいやいやいや」
葛葉自身は、吸血鬼であり、人間よりかはーー叶との配信で過去に運動のできなさっぷりを披露してはいるが、それは兎に角、少なくとも女性よりかはーー力は強いので、振り払えることは赤子の手を捻るよりもずっと容易いのだが、するには余りにも罪悪感が勝ってしまう。
しかし、余りにも多すぎる迷惑料を貰うことにも、罪悪感を感じてしまう。
どうすれば良いか分からず、結果、側から見れば手を取り合い、見つめ合った状態で硬直することになる。
「なぁに僕を置いて2人でイチャついてんの」
Aの肩に、叶の両腕が後ろからするりと入り込み、そのまま、彼女の首の前で両腕を絡める。即ち、バックハグというやつだ。
酔っ払っているのか、叶はあのねぇ、と葛葉に見せつけるように姉であるAの頬を片手で包み、自分の方を向かせる。
「僕たち、こういう関係だから」
Aが、かなえ、と言う前に、叶は己の唇を、姉の唇に重ねる。
暫く、その感触を楽しむのかの様に、そのままであったが、お互いの唇が少しだけ離れる。しかし、一度だけでは飽き足らず、何度も、何度も貪る様に彼女の唇にキスを落としていく。
角度を変えて、優しく、しかし、目の前の男に見せつけるのかの様に。
ちゅ、という何度目かのリップ音の後に、ようやく叶の唇が離れたと思えば、寄りかかって良いよ、と耳元で甘く呟く。
それを理解できたかはわからないが、叶が自分の方にAの体重がかかるように抱きしめ直し、Aもまた、腰が抜けかかっている状態なので、彼に体重をかける様になる。
息が上がり、赤くなっている顔を葛葉に見られたくないのか、彼女は俯いている。
そんな彼女の髪の毛にキスを落とし、叶は相方に向けて笑みを浮かべた。
「わかった?」
「お前酔いすぎだろ」
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作者名:ドリーム⭐︎トン | 作成日時:2022年8月1日 11時