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渡『…ここ、座って』
「あ、はい…」
ヘアメイクの渡辺さんは、黙ったまま
サラサラと私の髪の毛を何度も触っている。
渡『………あんたさ』
「…、はい?」
渡『髪の毛、なんか手入れしてんの?』
「…いえ、シャンプーとトリートメント、
くらいですかね…」
さっきオーラがないって言われたし…
髪の毛も怒られちゃうのかなぁ…
…と思ったら。
渡『…それ、マジで言ってんの?
それでこんだけツヤがあるとか…信じらんねぇ』
その後、お肌の手入れのことも聞かれたけど
乳液だけ、って言ったらまた驚いてた。
.
?『おはよー、翔太くん、やってんね、』
信じらんねぇ、を連発する渡辺さんの後ろから
にこにこしながらやってきた彼は…目黒さん。
…本物だ。
渡『あ、目黒、お前おせーんだよ』
目『いいじゃん、間に合うんだからさ』
渡辺さんの言葉を平然とかわすと
目黒さんは、鏡越しに私を見た。
目『初めまして、目黒蓮です。
雪乃さん、今日はよろしくお願いします』
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
目『ふはっ、緊張してるねぇ…
てかさ、さっき佐々木さんに“オーラない”って
言われてたよねー』
…あ、聞かれてた。
マジか、恥ずかしい。
俯いている私に目黒さんが言った。
目『そんなこと言われて、悔しくね?』
「えっ?」
目『悔しくねーか、って聞いてんの。
それとも、所詮広告モデルだって開き直る?』
急にそんなこと言われてびっくりしたけど
そんなわけないじゃん。
私だって広告モデルで終わりたくない。
「悔しい…です」
目『…だろ?だったらさ、今日の撮影で
あんたのモデル魂、見せつけてやれよ』
モデル魂……
そうだ、せっかく頂いたチャンス、
これをモノにできれば…、私だって!
「…わかり、ました、やります、私!」
そうこうしている間にヘアメイクが終わり、
私は衣装に着替えるため、二人にお辞儀をしてからメイクルームをあとにした。
.
渡『目黒…、アイツ、化けるかもな』
目『…俺の目には狂いはねーんだよ』
二人がそんな会話してるなんて、
全く知る由もなかったけど。
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作者名:みぃ。 | 作成日時:2020年12月8日 15時