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ryota side
俺を助けてくれたAさん、という人は
とても可愛いお嬢さんだった。
海に打ち上げられた俺を見つけたこのワンちゃん──
ルークと共に、この家まで運んでくれたなんて。
「火事場の馬鹿力、って本当にあるんですね」
そう言って笑う顔が、愛しくて。
初対面の俺がそんなこと思うなんて、結構ヤバいけど。
淹れてくれたホットココアは
彼女のお気に入りだそうで、とても美味しかった。
「あの…」
『ん?』
少し苦しそうな顔をしたAさんは
突然こんなことを言ったんだ。
「あなたは───、不審者、と言うんでしょうか?」
『ぶっ、ごほっ、ごほっ、』
「あ、だ、大丈夫ですか……!」
思わず噎せてしまった。
え、なに?不審者って───
それ、俺に聞く??
『──なるほどね、それで…』
Aさんに言葉の真意を聞いて、納得した。
巡回のお巡りさんに言われた “不審者” という言葉が
頭を過ぎって、気になっていたということ。
まぁ、そういう意味では俺も不審者だ。
いきなり海から現れたんだから。
だけど────、ちょっと待って。
それって……、
「あの、どうしたん、ですか?」
俺が急に黙ったからか、Aさんが不安そうに
顔を覗かせる。
────本当に、可愛いお嬢さんだ……
『あのねAさん、今から俺が言うこと
よく聞いてくれる?』
そう言うと、Aさんは頷いた。
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作者名:みぃ。 | 作成日時:2022年10月4日 20時