切ない恋心をキミに。 (ページ8)

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koji side

父『昨日は、Aがお世話になったね。
……ありがとう、康二くん』

『あ、いえいえ！俺も久しぶりに会えて
楽しかったし、これも仕事ですから。
あ、それと…ご結婚、おめでとう…ございます』

父『………』

『あの……、どないかしたんですか？』

返事をしないおじさんにそう尋ねると
おじさんは悲しそうな顔をして言った。

父『…私は、間違ったことをした…』

『え？それはどういう…』

父『会社のために…Aを…』

『…会社の、ため…？』

Aの父親はここ大阪で
そこそこ大きい会社の社長さん。

そして娘であるAは、ゆくゆくは
父親の会社で幹部として働くことになるけど

まずは社会勉強として
東京にある関連会社に勤務するために
単身、上京してたんや。

だけど…

仕事で付き合いのある上場企業の御曹司が
Aを見て一目で気に入ったらしく
結婚を迫ってきたらしい。

父『断れば、会社への融資を取りやめる、と…』

『えっ、それでAはなんて…』

父『あの子は優しい子やから…
“私、行くわ”って一言も嫌とは言わんかった』

『あ……、』

だから、か…

ちっとも幸せそうやないのに
無理に笑顔作って。

　

“…私、幸せだよ”

って見え透いた嘘ついて。