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A side






玄関で立ち尽くしたままの零。


「何してんの、早く入って。」


零を見て揺らぎそうになる覚悟を必死に搔き集め、後ろを振り返った直後世界は一気に回った。
押さえつけられた両手。背中には壁。目の前には零。
唇の感触。


ーーーえ?




角度を変えて何度も啄むようにキスをしてくる零は、呼吸さえさせてくれない。

息苦しくなって口を開けば、その僅かな隙間をこじ開け、零の舌が侵入してくる。


零の舌を噛むことだって出来たのに、それはどうしても出来なかった。



ずっと休む暇なく口付けをされている私の視界は涙で滲んできて、体からも力が抜けてくる。


私の腰が崩れ落ちると同時に、零に抱え上げられ、ソファまで連れて行かれる。



このまま相手のペースに飲まれてはダメだと思い、呼吸を整えながら、必死に話しかける。

「…あの、ね、れい。話、があるの。」

「……。」


言おうとした言葉は、喉の辺りで一度つかえる。


「…私、たち…別れ、ましょう?」


自分を追い詰めて追い詰めて、ようやく絞り出した声は、自分でも分かるほどに震えていた。


零は私の言葉を聞いた瞬間に目を大きく見開き、私を抱えたままソファへと座った。



「…何で。」

「だって、零は…、潜入捜査がある、でしょ?」

「あぁ。ある。」


零は、私を抱えたまま下ろすつもりはないようだから、零の腕の中で気持ちを、声に出す。


「私、自分がそのための道具なんだなって思うと、悲しくなっちゃって…。
私が、零と普通に話せなくなったら、零の潜入捜査の足手まといにも、なるし。
零は私のことを好きじゃないのに、って考えちゃうから。
だから…。」

「…は?ちょっと待て。誰がお前のこと好きじゃないって?」

「クソ上司。」

「今は違うだろ。」

「…零、が。」

「あのなぁ、俺はそこまでダメな男じゃないから。」


零はやれやれと首を振ると、俯いて話していた私の顔を両手で掴み、上を向かせる。


「お前、俺が好きでもない女とキスすると思ってたのか?」

「うん、思ってるの。」

「現在進行形かよ。」

「現在進行形で悪いかよ。だって私、零に…。」

「俺に?」

「そ、その…。」

「何だよ、早く言え。」

「…好きって、言われてないし。」


零はニヤリと笑うと、いつかのように私の耳元に顔を寄せ、呟いた。







.








「愛してる。」






.

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いちごって美味しいよね - あっさんさん» すみませんでした!うっかり見落としていて…。教えてくださって本当にありがとうございます! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - ういさん» 感動していただけたことに感動です!!恋愛って自分が思ってるより、案外難しいんですよね…。応援よろしくお願いします! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
うい - 少し泣ける所もありました。感動です! 恋愛って難しいですね。 次の更新楽しみにしてます (2018年8月2日 23時) (レス) id: ab4f966f00 (このIDを非表示/違反報告)
あっさん(プロフ) - こんにちは、すごく面白そうで見てみようと思ったのですが主人公の名前変えられる様にしてもらえないでしょうか、、汗 (2018年8月1日 1時) (レス) id: dd857b1956 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いちごって美味しいよね | 作成日時:2018年7月28日 0時

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