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A side
しばらく玄関でうずくまって、虚無感が消えていくのをジッと待った。
ようやく動く気が出てきた自分の体を引きずり、ソファへと雪崩れ込む。
目をギュッと瞑った途端に一粒だけ涙が目尻から滑り落ちた。
「…情けない…よね。貴方達を、思い出すだけで、こんなになってるなんて。」
スーツのジャケットを脱ぎ、風呂場へと足を運んだ。
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少し冷静になってきた頭で、零とのことを考える。
今度、零はまた潜入捜査をするらしいし…、もしかしたら、それに都合よく使われるだけ、なのかもしれない。
そうすれば、私はきっと、もっと傷付くんだろう。
私が勝手に傷付いて、零と普通に接することが出来なくなれば、零の潜入捜査の邪魔をすることにもなってしまう。
それに、パートナー役ならいくらでも代わりはいるんだろう。
ーーー零の邪魔になるくらいなら…、この関係に終止符を打たないと…。
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零がしてくれたキスを思い出して唇を指でなぞった。
今でも鮮明に思い出せる零の唇は、もう私に触れることはないのだろうか。
「…しっかりしなきゃ。」
パチンッと自分の両頬を叩いて、勢いよく立ち上がろうとした時だった。
インターフォンがミとドの音を軽快に奏でる。
こんな、もう深夜とも取れる時間に…、誰だろうか。
少し警戒しながらも、応答をすると、そこにはさっきまで、というか今も私の頭の8分の7を占めている人物が立っているじゃないか。
「…降谷さん?どうなさったんですか?」
「入れろ。」
さっきの自分の考えを零に伝えるのにもいいか、と思い、
「どうぞ。」
とだけ言って、エントランスのロックを解除した。
さっき、自分でそれなりな覚悟を決めたはずなのに、心臓が痛い程に脈打っていた。
深呼吸をして、玄関の前に立ち、念のためもう一回深呼吸をする。
ーーー零のためだから。言わなきゃ。私から言わなくちゃ。
しばらくして、零の足音がコツコツと聞こえてきた。
その足音が止まったところで、玄関のドアをゆっくりと開けると、そこにいる零の顔は俯いていた。
咄嗟に零の肩に手を乗せて、顔を覗き込むも、失敗する。
「零…?ひとまず入って。」
様子が少しおかしい零を部屋へ入るように促せば、綺麗な碧い瞳が私を捉える。
「A…。」
「ほら、まず入って。ね?」
なだめるようにそう言い、零を部屋へと入れた。
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いちごって美味しいよね - あっさんさん» すみませんでした!うっかり見落としていて…。教えてくださって本当にありがとうございます! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - ういさん» 感動していただけたことに感動です!!恋愛って自分が思ってるより、案外難しいんですよね…。応援よろしくお願いします! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
うい - 少し泣ける所もありました。感動です! 恋愛って難しいですね。 次の更新楽しみにしてます (2018年8月2日 23時) (レス) id: ab4f966f00 (このIDを非表示/違反報告)
あっさん(プロフ) - こんにちは、すごく面白そうで見てみようと思ったのですが主人公の名前変えられる様にしてもらえないでしょうか、、汗 (2018年8月1日 1時) (レス) id: dd857b1956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごって美味しいよね | 作成日時:2018年7月28日 0時