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降谷 side
Aの書類を手に取り、先ほどのことを思い出す。
『その書類で最後なので上がらせてもらいます。』
怒気を含めた口調でそう言い、俺の元に一度は置いた書類をまた自分で手に取り、何かを剥がした後、また元の位置に置く。
という意味の分からない行動をしたA。
数枚重ねられていた書類を一枚一枚確認していくと、1枚だけ異様によれた書類、そこにはうっすらだがノリの跡が残っていた。
付箋、か?
さっき彼女がグシャリと音を立てて丸めていたものだろうか…。
Aのことを考えていたせいで余計に仕事が進まなくなり、更にイライラしていたところに、
「降谷さん。」
という風見の声。
「なんだ、風見。」
一旦気持ちを落ち着かせてから風見の話を聞く体勢をとる。
「早乙女、怒ってました。」
「…何でだよ。」
「それは、降谷さん、ご自分で考えて下さい。」
いつもなら風見にこんな言い方をされたら腹を立てているところだが、Aが少なくとも“俺のせいで”傷付いたという事実に頭を悩ませた。
しばらくそのまま頭を抱えるも、一向に答えが見つからない。
「…風見、ヒント。少しでいいから。」
「はぁ…。降谷さん、早乙女のゴミ箱です。じゃあ私も上がらせてもらいます。」
ゴミ箱ってなんだよ。ダストボックスか?ゴミの箱か?
兎にも角にも1人きりになってしまった室内で、彼女のデスクへと歩く。
久し振りに目を向けた彼女のデスクは女らしいものなんて1つもなく、周りの奴らのデスクから浮くこともない。
「ゴミ箱…、これか。」
彼女のデスク脇にあるゴミ箱を見つけて、しゃがみこむ。
紙ゴミ中に1つだけ、妙な程にグシャグシャに丸められた青色の紙が、白の中でこれでもかというほど存在感を放っていた。
その紙を拾い上げ、丁寧に開いていく。
『今日、一緒に帰りたい。』
たったこの一言だけを、綺麗に整った文字が伝えていた。
彼女が書類提出に来た時の自分の対応を思い出す。
『俺は忙しいんだ。早乙女、邪魔だ。どっか行ってろ。』
警察学校時代からの仲だからと言って、彼女に酷いことを言ってしまった。
あまり甘えて来ない彼女が、甘えて来たのにそれをはねのけてしまった。
Aは、1人で帰ったのか。
俺の言葉に傷付いて。
今思えば、恋人らしいことだってしてやれていない。
自分の荷物を急いでまとめ、公安部を後にした。
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いちごって美味しいよね - あっさんさん» すみませんでした!うっかり見落としていて…。教えてくださって本当にありがとうございます! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - ういさん» 感動していただけたことに感動です!!恋愛って自分が思ってるより、案外難しいんですよね…。応援よろしくお願いします! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
うい - 少し泣ける所もありました。感動です! 恋愛って難しいですね。 次の更新楽しみにしてます (2018年8月2日 23時) (レス) id: ab4f966f00 (このIDを非表示/違反報告)
あっさん(プロフ) - こんにちは、すごく面白そうで見てみようと思ったのですが主人公の名前変えられる様にしてもらえないでしょうか、、汗 (2018年8月1日 1時) (レス) id: dd857b1956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごって美味しいよね | 作成日時:2018年7月28日 0時