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A side








陣平は、4年間もそばにいた私にはなんだって相談してくれた。

ただ一回だけ、陣平が話すのを渋った話があった。

『あのよ、A。』
『なに?陣平ちゃん。』
『俺、好きな奴、出来たかも。』
『え…!どんな人?!』
『絶対言うなよ。』
『小学生みたいなこというのな、言わないから大丈夫。』
『…佐藤って刑事だ。』


電話口で少し照れながら話す陣平の話を、私も一緒になって喜びながら聞いていたのを、よく覚えている。
それは、陣平に恋をする余裕が出来た、ということだからだ。



目の前の女性は私が流せなかった大粒の涙をボロボロと零して、「松田くんっ…。」と何度も呼んでいた。


知らない人だといえ、この人はきっと陣平の守りたかった人だ。それなら、この人の心を守ることが私が陣平のためにしてあげられることだろうと思ったのだ。


横からギュッと抱きしめると、彼女はすがりつくようにして私に抱きついてきた。自分のスーツの肩口が彼女の涙で濡れていくのを感じながら、落ち着くまでずっと名前も知らない彼女の背を撫で続けた。


そんな彼女と親しくなるのは必然的なもので、私と彼女…佐藤美和子はお互いすぐに心を開いた。
陣平を失って傷心の彼女を励ましていれば、偶然にも捜査会議の時に公安部から出席していた景光に再開した。


『ひろみっちゃん、公安だったのか〜、優等生だな。』
『Aは相変わらずそのノリなのな。』
『まぁね。これが私のいいところ、でしょ?』
『そりゃそうだろ。お前の笑顔に皆元気貰ってたしよ。』
『もう、口説くの上手くなったじゃん。』
『まぁな。体、壊さないようにしろよ。』


景光はどこか遠くを見つめながら、私の頭をポンポンと撫でてすぐに去って行ってしまった。


その三週間後、景光が殉職した。
危険な潜入捜査をしていて、情報を守るために自害したらしい。
それはそれで景光らしかったけれど、私の心はまた深く傷付いた。

…そういえば、零のヤツ。景光と幼馴染みだったな。

そんなことを思いながら、返信の帰ってこなくなったメールアドレスに、『辛いだろうけど、無理せずに頑張って。』それだけ打って送った。




景光の死と向き合おうとしている時に、ワタルブラザーズなんて名乗っている航と出会った。

航はどうやら捜査一課の高木渉という新入りちゃんの教育係をしているようで、私と顔を合わせた時も相変わらずの老け顔で豪快に笑っていた。






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いちごって美味しいよね - あっさんさん» すみませんでした!うっかり見落としていて…。教えてくださって本当にありがとうございます! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - ういさん» 感動していただけたことに感動です!!恋愛って自分が思ってるより、案外難しいんですよね…。応援よろしくお願いします! (2018年8月6日 23時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
うい - 少し泣ける所もありました。感動です! 恋愛って難しいですね。 次の更新楽しみにしてます (2018年8月2日 23時) (レス) id: ab4f966f00 (このIDを非表示/違反報告)
あっさん(プロフ) - こんにちは、すごく面白そうで見てみようと思ったのですが主人公の名前変えられる様にしてもらえないでしょうか、、汗 (2018年8月1日 1時) (レス) id: dd857b1956 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いちごって美味しいよね | 作成日時:2018年7月28日 0時

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