【名探偵コナン】“嫌い”の裏は“愛してる”~Epilogue~【降谷零】 (ページ9)

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Epilogue 9 ページ9

A side

１年後…

「早乙女さん、ご退院おめでとうございます！」

「長い間お世話になりました。…ありがとうございました！」

「彼氏様とお幸せに！」

看護師やら医者やらが見送ってくれているが、これは多分零パワー。
このコイツのイケメンスマイルにやられた人達が、私の退院を喜ぶも零との別れを悲しんでいるようにしか見えない。

あっ、ほら、今見た？！ハンカチ目に押し当てた！！

「A、行くぞ。」

ジトーっとその看護師を見ていると、零にエスコートされて助手席へと座らされた。

車は前と変わらず、白のRX-7。
てっきり、車は変わってしまっているとばかり思っていた。零は無茶ばっかりするから。

助手席からたまにふわりと香ったベルの香水の匂いがとてつもなく、恋しくなった。
一度はその匂いに嫉妬までしたのに。

「ベル…。」

長らく呼んでいなかったその名前を口にすれば、やっぱりただただ彼女に会いたくなって目尻に涙が浮かぶ。

「おいおい、これから恋人との愛の巣に帰ろうって時に浮気か？A。」

そんな私を柔らかい笑みで包んでくれた零に、首を横に振って、笑いかけた。
そして毒突く。

「ほんとさ…、あんたよくそんな恥ずかしい言葉がペラペラと出てくるよね。ある意味尊敬だわ。」

「お前に尊敬されても嬉しくないな…。」

「失礼だな！！もー。」

こうして茶番をして、笑いあえる今の幸せは、きっと続く。これからも。

いや、続かせる。

.

「たーだーいま！」

「おかえり。」

久しぶりに帰ってきた我が家の玄関へと入ると、後ろからそっと抱きすくめられる。
そんな彼はどうしようもなく可愛くて、ついつい甘やかしたくなるが、そんな事は言ってられない。だってさ、ほら？荷物整理しなくっちゃ。

「れーい。荷物整理しよ？ほら。1日終わっちゃう。」

「……わかった。後でな？」

「分かった分かった。」

この『分かった分かった』に私は後で、腰を擦りながら恨めしさを感じる事になるとは、塵ほどにも思っていなかった。