第伍拾伍話 ページ8
.
「…殺生丸、本当にAちゃんに惚れ込んでるのね。」
「…みてぇだな。」
「…そうみたいだね。」
「…そのようですね。」
皆が口を揃えてそういうのには、訳があった。
今日も野宿をするあたし達が焚いた火から、少し離れた所で木の幹に背を預けている殺生丸の腕の中には、最初よりも大分穏やかに息をする、目を閉じたAちゃんが大切に抱えられているから。
それが、あたし達が口を揃えた訳だ。
「そりゃ、Aちゃんがあんだけ幸せそうに笑える訳だね。」
「うん…、あそこまで愛されたら、幸せでしょうね。」
「そうですね…。」
うっとりと二人の様子を眺めるあたし達に、軽蔑に似た眼差しを向けているのは言わずもがな、犬夜叉だ。
何故か弥勒様はコチラ側についているが。
「こんの、助平法師！！！！！」
大きな平手の音と、珊瑚ちゃんの声からして…。
弥勒様の目当ては、珊瑚ちゃんのお尻を触ることだったみたいだ。
……懲りないわね。
「…そういえば、殺生丸。りんちゃんに邪見に蘭丸はどうしたの？」
「りんは阿吽に預けている。明日には追い付くだろう。
蘭丸も恐らくAの匂いを追ってくるはずだ。」
「…邪見は？」
「知らん。」
無慈悲にもそう言った殺生丸。
だけど、それが冷酷に聞こえないのは、Aちゃんを大事に抱えている事による効果なのだろうか。
「ふふ、雲母も蘭丸に会いたいのかい？」
「オラも会いたいぞ！！」
「そうね、あたしも会いたいわ。」
「私は早くA様に目を覚まして頂きたいですね。そして、あわよくば私の子を産んで……」
「おい、そこの生臭坊主、もう一度同じ事を言ってみろ。
例え冗談であろうと塵にしてくれる。」
うわ……、殺生丸本気だわ。
毒華爪構えてるし…、何よりも目が、うん。
本気だわ。
「すみません、冗談ですよ。それに、人様の女性に手を出すほど相手に困っていませんのでね、ハハハハ……」
「法師様、最っ低。」
「弥勒様、いくらなんでもその言い逃れは最低よ。」
「そーだぞ、弥勒ー」
「そうじゃそうじゃー！」
「皆して私を責め立てて…、、、」
そんな会話を繰り広げているあたし達を差し置いて、殺生丸は瞼を伏せていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 677人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
1003 Nina(プロフ) - 一気に読ませていただきました。美しい終わり方で暖かい気持ちになりました。別作品も読ませていただきたいと思います！ (2022年3月30日 2時) (
レス) @page19 id: 85e410e486 (このIDを非表示/違反報告)
月篠 - もう最後泣いちゃいました。とても面白かったです!! (2020年8月17日 10時) (レス) id: 776853be40 (このIDを非表示/違反報告)
0wh790112p351y(プロフ) - もう最後泣きました、殺生丸様来た時泣きました。めちゃくちゃ面白いです！ (2020年5月31日 10時) (レス) id: ff99cc9e63 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます。嬉しいです(´∇｀)更新頑張らせて頂きます！ (2020年5月28日 1時) (レス) id: afb320640f (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白かったです。おもわず一気見してしまいました。これからの更新も楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: b2104f9538 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごって美味しいよね | 作成日時：2019年5月1日 2時
