第伍拾壱話 ページ4
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理性を失った清姫は、何を判断するでもなく私に一直線に走ってくる。
かろうじて浄化できている邪気も、精神が不安定になっている今ではいつまで持つかすら分からない。
ましてや…、彼女の想いを知ってしまった私が、彼女が自分よりも恵まれていると恨んだ私が、彼女を浄化する事が許されるのか。
それだけが胸に引っかかって取れそうになかった。
いつだったか、旅の途中で会ったあの巫女なら今、すぐに判断できたのだろうか。
それとも、もっと最善と呼べるような策を見つけているのだろうか。
そう考えている間にもどんどんと瘴気の量は増していく。
足元さえも掬われそうだ。
「お前のカラダを…、くレ…。」
四魂の欠片を取り込んでしまった妖怪には、何を言おうと通じることは無い。
ただ、瘴気を浄化し続けるだけしか出来ない。
ふと、邪気に混ざって、あの霧の匂いがした。
私と殺生丸をあっという間に離れ離れにした、あの霧だ。
特徴的な甘い匂いに気を取られたせいで、少し緩んだ結界。
すぐに塞ごうとした筈なのに、どんどんと雪崩込んでくる瘴気には全く意味を成さなかった。
ようやく結界を塞げば、もう既に結界の中は手遅れだった。
私の身体に纒わり付くその瘴気を浄化しようとした私は、また加減を忘れてしまったようだ。
「……っ」
結界内の邪気は消えたのに、私の体力が先に限界を訴えた。
膝から崩れ落ちた私にはもう、成す術はない。
＿＿＿＿＿＿りんちゃんは、ちゃんと逃げてくれただろうか。
清姫も追いつけぬほど遠くに行けただろうか。
そうすればきっと、殺生丸が見つけてくれる。
ふと鮮烈に蘇ったのは、
絹より艶やかなあの人の銀髪。
雪のように白くて滑らかな肌。
私を愛おしげに見つめる琥珀色の瞳。
私を抱き締めた、逞しい右腕。
「っ…殺生、丸、さま……」
私は最後に、愛おしい彼の名前を紡いで、意識を手放した。
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1003 Nina(プロフ) - 一気に読ませていただきました。美しい終わり方で暖かい気持ちになりました。別作品も読ませていただきたいと思います！ (2022年3月30日 2時) (
レス) @page19 id: 85e410e486 (このIDを非表示/違反報告)
月篠 - もう最後泣いちゃいました。とても面白かったです!! (2020年8月17日 10時) (レス) id: 776853be40 (このIDを非表示/違反報告)
0wh790112p351y(プロフ) - もう最後泣きました、殺生丸様来た時泣きました。めちゃくちゃ面白いです！ (2020年5月31日 10時) (レス) id: ff99cc9e63 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます。嬉しいです(´∇｀)更新頑張らせて頂きます！ (2020年5月28日 1時) (レス) id: afb320640f (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白かったです。おもわず一気見してしまいました。これからの更新も楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: b2104f9538 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いちごって美味しいよね | 作成日時：2019年5月1日 2時
