第126話 俯いた先の猫 ページ6
ケイゾウの協力も虚しく、ケータ達が集めて来た情報が頼りになった。
やれやれ、と溜息をついたウィスパーが妖怪パッドを取り出して
彼らが聞いたという話をA達に伝えてくれる。
「──マスターニャーダは猫の妖怪で、ヒゲがあって……」
猫なら誰だってヒゲがあってもおかしくないような気がするのだが。
腕を組んだAは、彼らの情報から空想でその人物像──
もとい妖怪像を割り出そうと、俯きがちになった。
……その俯いた視線の先で、見慣れぬ何者かの姿が映る。目が合った。
「背中にマントを羽織っている……、そうですよ」
今の今まで気づかなかった存在に、Aは驚いて声を失っていたが
ウィスパーが続けざまに言う情報を耳にして、更に驚愕する。
いつの間にか俯いた先に居た何者かは、猫の妖怪で──
顔にヒゲがあって、緑色のマントを羽織っていた。
「……とは言ってもさ、そんな簡単に見つからないよね」
「そうニャン、見つかる訳ないニャン」
ケータとジバニャンが顔を見合わせる一方、こんにちはと言わんばかりに
片手を上げた猫の妖怪に、Aは戸惑いながら小さく頷く。
「だって、最強妖怪ですよ? もし仮にこの辺りに
いらっしゃるとしたら、私のこの目が見逃す筈ございませんし……」
べらべらと喋るウィスパーに、自分の事だと言うように自らを指さすが
まず、その動作が誰の目にも映っていない。
諦めたのか何なのか、目の前の猫はやがて佇んだままの眠りに就いた。
「全く……マスターニャーダはどこにいらっしゃるのでしょうねぇ〜?」
「……あのさ…………」
いっそ白々しくも思える彼らのやり取りの中、
ようやくAが小さな声で彼らに呼びかけた。
すると、周りに居る全員が“何だ”と彼女に視線を集めたが
直後にAの視線の先を辿り──。
「「「…………!!」」」
「ウィスパー、前! 前!!」
「え? なんですか? 私は今忙し…………」
ケータ達も緑の固まりを目にして驚愕し、
妖怪パッドを見つめていたウィスパーが続いて視線を移すと
その数秒後、商店街中に彼の──さながら、絶叫が響き渡った。
〜･〜･〜
どうやら情報によっても、目の前に居る猫の妖怪に聞いてみても
彼が“マスターニャーダ”と呼ばれる者に間違いないようだ。
とわかれば、ケータ達は早速彼にこれまでの経緯を話して、協力を仰ぐ。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
