第125話 少しでも早く。 ページ5
決して一人で勝とうとは思ってはいけない。そういう戦いだ。
恐らくは、大ガマや土蜘蛛がどちらか一人だけになっていたとしても
奴等を平原の中に止めさせる事は難しかっただろう。
「……そうだな。君の言う通りだ」
もちろん、それは彼女自身こそ十分に承知していた事だった。
フユニャンの言葉を聞いたAの脳裏には、かつて妖魔界と
人間界に渡り共に戦ってくれた、仲間達の姿が過る。
「でも……やっぱり、私があそこで逃げるしかなかった事が──悔しい」
こうしている間もまだ、二人は厄怪という怪魔を止めている所なのか。
あるいは既に何か変化が起きているかもしれない。
……そこまで思考を巡らせると、ようやく彼女は前を見据える事が出来た。
「──ただ、いつまでも引き摺ってばかりでは居られない。
早くマスターニャーダを見つけ出して、力を貸してもらわなければ」
「……ああ、その通りだ!」
彼女のその心理状況の変化が“正義感”の影響によるものだったとしても
これは間違いなく良い傾向だったと、フユニャンは思いたかった。
だから力強く頷いて、彼もまた決意を固めた時。
「やっぱガッツ仮面、カッコ良いぜ! ガッツ! ガッツガッツ!!」
どうやら、テレビの方でガッツ仮面の放送が終わったようだった。
未だ熱が冷めやらぬ様子で決めポーズをとっている彼を見て、
つい先ほどの決意が瞬時に抜けて行く。
──そこで、駅前に言っていた筈のケータが
こちらへ歩み寄って来たのに気が付き、Aが声をかける。
「ケータ。もう何か手がかりを掴んだのか?」
「う、うん……──ケイゾウ、どうしたの? やけにご機嫌みたいだけど……」
「さっきまで、ここのテレビでガッツ仮面の番組をやっていたんだ」
「いや〜。ウチにはまだテレビが無いからよ、ホントに動いてて感動したぜ!」
今までにないケイゾウの興奮っぷりに、ケータはすっかり戸惑っていた。
それにフユニャンが答えた後、満面の笑みを見せるケイゾウにはまた苦笑いが零れ。
「……という訳で、ニャーダの情報はまだ何も……すまない」
「「「…………」」」
──まあ、声を失いたくもなるだろうな。
肩を落として謝ったフユニャンはケータ達の反応を見ながら
案の定、と続け様にその肩を竦めさせていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
