第160話 燃え上がる戦場 ページ40
目的は違えど、こちら側もアエラス達もウバウネを討たんとしているのは同じだ。
しかし、彼らは自分達で倒すからこちらに下がれと言う。
無闇に手を出さないのが正解なのか、彼らの声を無視して戦うのが良いのか。
対峙してしまったからには、少なくとも身を守るために
身構えなければならなかったが、そこからどう動くべきかを悩んだ。
「アイスだっヨ〜ン!」
時を待たずして、杖を目の前に突き出したウバウネが氷の術をぶつけてくる。
──そこへ、キュウビが相手の術も“彼ら”の存在も
無視するようにして、自らの妖術を放った。
「煉獄の術!」
「あら、珍しく攻撃的なのね? ならこっちも遠慮なく行くわよ!」
続いて女郎蜘蛛が放った隕石の術と炎の術が共に、
こちらに向かって来ていた氷の力を呑み込んで相手に襲い掛かる。
ウバウネは土の力を容易に跳ね除けるが、キュウビの術には手こずる様子を見せた。
「おや……どうやら炎の術がよく効くようだねェ。
犬神、これは君にはちょっと分が悪いんじゃないかい?」
「……これで私にとって分が悪いというなら、相手にとってもそれは同じ事」
キュウビがちらりと見やった先で、犬神が尚も落ち着いた様のまま
アエラスと顔を見合わせ、頷き合う。
「──寧ろ、状況はこちらに有利です」
「というか、犬神が炎の術を放っちゃえばそれで万事解決なんだよね」
「は? 何を言って……」
訳の分からない事を言い出す犬神と、滅茶苦茶な事を言い出す
アエラスには、流石のキュウビも己の耳を疑ったようだ。
訝しげに眉を寄せていたが、ふと犬神が即座に妖術を放つと、ウバウネの下で
先ほどキュウビが放ったのと変わらない威力の業火が巻き起こった。
「ぐぅぅ……!」
予期せぬ事態が起こり、炎の攻撃をもろに受けたウバウネが唸り声を上げる。
それを目にしたオロチも、驚いたように目を見開く。
「馬鹿な……! 犬神は氷の力を使う筈では……」
「それじゃあ、いっその事、全員の妖力を炎の力に変えちゃおうか!」
「──な、何だって??」
面白そうに笑っている犬神の傍らで、またもやアエラスが可笑しなことを口走る。
そんな事を言ったって、そう簡単に己の使う術の性質など変えられるものか──
素っ頓狂な声を返したAを始めに、誰もが困惑した顔つきを見せた。
……ただ、アエラスと共に居た犬神達を除いて。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
