第155話 二度言う ページ35
という事は、一先ず桜町の安全は守られた訳だが。
そうとなれば後はウバウネを討ちに向かいたいところ。
しかし……彼らはまだ相手の居所を知らない。ケータ達の安否も気になる。
「……とにかく、皆と合流したいが……」
果たして、他の者達はどのように動いているのか。
先を急ぐ状況で、すれ違いなどは起こしたくない。
仲間の姿を探し始めるべきか、自分達がここで待つべきか──二人は悩んだ。
──そこへ、彼らの思いに応えるかのように紫の靄が発生した。
「…………二人共!」
この場に現れてくれたのは、ケイゾウの後を追っていた筈のフユニャンだ。
彼はAとオロチの姿を見つけてホッとした様子を見せると、
二人が何かを返す前に矢継ぎ早に要件を伝える。
「ウバウネの居場所がわかったぞ! ケイゾウが見つけ出したんだ!」
「居場所が?」
てっきり仲間達の状況を知らせてくれるのかと考えていたが、
思わぬ情報を持って来られてオウム返しをするA。
「ああ。町の更に南にある、三丁目の夕陽ヶ丘工場だ」
彼女の問いに大きく頷いたフユニャンが、すぐにその居場所を告げた。
なるほど、一度も足を運んだことのない場所だ──
顔を見合わせたAとオロチに、再びフユニャンの声が飛ぶ。
「──三丁目の夕陽ヶ丘工場だ!」
「…………何故二回も言う」
話ならしっかりと聞いていた筈だぞ、とキリリとした顔つきで
告げているフユニャンに、オロチが疑問符を飛ばした。
すると前者は気恥ずかしそうに頭を掻きつつ、僅かに小さくなった声でこう答えた。
「いや、なんとなく……」
「「…………」」
──きっと、よっぽど大事な事だったんだろうな。
そういう事にしておこう、と無理に納得しておいて頷いたAは
改めて気を取り直し、彼に再確認を行った。
「えっと……とにかく、そこへ向かえば良いのか?」
「ああ、他の皆もそこへ呼び集めた。ケイゾウが待っている、行こう!」
果たして、友達など居ないと言い張る彼が真に待っているかは怪しいが。
どちらにしろ、急がなければケイゾウはすぐに先へ進んでしまうだろう。
互いに頷き合った三人は、すぐにその場から姿を消し
夕陽ヶ丘工場に続く道を辿って行く。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
