第124話 思い詰める ページ4
──そういえば、この時代ではまだテレビもカラーではないのか。
Aはケイゾウの下に歩み寄りながら、彼と同じく目の前のテレビを見つめた。
「…………」
しかし、すぐに首をかしげると何かを諦めた様子で
数歩下がり、別の男子達に場所を譲ってしまう。
テレビの置かれている店は電気店なのだから、
こんな場所で視聴されたら商売している側は困ったものなのだろうが。
「どうした? やっぱりガッツ仮面では肌が合わなかったか?」
「い、いや……まあ、そんなところかな。しかしこれでは、捜索どころじゃないぞ」
「……それは……、許してやってくれ」
すっかりテレビを見て盛り上がっているケイゾウの姿に、
Aとフユニャンは揃って苦笑してしまう。
普段は落ち着いて澄ましたような物腰で居るが、
本当は彼も単なる少年だったという事だ。
「なら、この花道商店街の方はどうだ? 何か思うところはあったか?」
「……もちろん、現代とは幾らか違って見えるけど……
この過去に生きていたわけでも無いのに、何故だかどことなく懐かしいよ」
ケイゾウがガッツ仮面をよっぽど好んでいるのは良くわかったが
この商店街も、この過去の街を基礎に現代にまで面影を残しているのがわかる。
そこには現代も過去も変わらず、生活と笑顔が寄り添っている光景が見受けられた。
「──ありがとう、フユニャン」
……おかげで、意識を外に向ける事で大分落ち着いた。
きっと彼の狙いはここにあったのだと、今ならわかる。
「私が思い詰めているのを見て、こうしてここへ誘ってくれたんだろう?」
「……いや、そんな大した事じゃないさ」
礼を言われたフユニャンは照れたように頭を掻きながら言うが
やはり、図星ではあるのだろう。
しかし──その事を思っては、Aは小さく溜息を吐いてしまう。
「…………どうにかしないとな……」
「……それは、君だけが思い詰める事じゃないんじゃないか?
だから俺達は今こうして、協力しながら彼の妖怪を探そうとしているんだ」
平原を出るまでは痺れていた両手も、今は何ともない。
だが……あの感覚はまだ、鮮明に思い出せる。
自らの手を見下ろしながらそう呟く彼女に、フユニャンが訴えかけた。
「あの大合戦中でも、まさに俺達が力を合わせて戦い抜いたように
──仲間と力を合わせれば、必ず奴等にも打ち勝てる筈だ……違うか?」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
