第148話 “見た”。 ページ28
それよりも気になるのは、二人で戦うというだけなら
わざわざフェアネスを呼ばずとも、あの四人で協力しても
良かったのを、土蜘蛛はそうしなかったという事の方だ。
「……恐らく、それにお前を同行させたのも……お前があの“アエラス”
という者に対して動揺しているのではないかと、お考えになられたからだ」
「…………」
──土蜘蛛は何も語らずして二人を同行させたが
それでも彼の真意を汲み取った、元祖軍の幹部であるオロチの指摘は鋭かった。
要するに、土蜘蛛の予測も正しいものであったのだ。
動揺を抑えられる自信はあったが、有無を問われれば無いとは言い切れない。
「あの“アエラス”という女……お前の知り合いなのか?」
「……知り合い、か」
考え込むために黙り込んでしまったAに、ふとオロチが問う。
それに対して彼女は反芻するようにして呟いてから
目を伏せて、力無く首を横に振った。
「知り合いというよりかは……あれは“私”だ……」
「…………?」
“どういう意味だ”と言わんばかりに眉を寄せるオロチを認めつつ、思考を巡らす。
アエラスからあれやこれやと、様々な事に関してを説明された時は
あまりに突拍子もない事に戸惑ってしまったが──
彼女から明かされた現時点での話をまとめたところで、Aはわかったのだ。
「あのアエラスがどのようにして生まれたのか、どんな妖怪になってしまったのか。
私にもわからないけど……ただ、多分、あの子が生み出された瞬間は──見た」
「……生み出された、瞬間……」
影オロチと共に居た事もあってか、
オロチも妙にあのアエラスという妖怪が気になっているようだ。
──確かに、彼女の存在は謎に包まれ過ぎている。
Aはその彼に、どのような理由でそうなったのかまでは話せなかったが
そうなったという事実のみを伝えながら、“見た”事についてを説明し始めた。
…………あれは確か、遠い“どこかの時”に
“A”が人としての命を落とした後の事だ。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
