第147話 動きが止まるまで ページ27
唐突に、込められる力が跳ねあがったオロチには
つい先ほどまで余裕を見せていた難怪も怯み、驚き戸惑った。
その隙を見逃さなかったAは、相手が瞬時に立ちなおす前に術を放つ。
「──吹雪の術!!」
準備を整えて放たれた力が、確実に相手を氷の中に閉じ込める。
そこへ、続けてオロチが攻撃を繰り出した。
「やまたのおろちッ!!」
「ぐぅっ……!」
動きを封じられた難怪は、氷ごと彼の技をもろに受けて唸り声を上げる。
これには流石の怪魔も耐えられなかったらしく、砕けた氷と共に地面に崩れ落ちた。
──短期決戦となったが、少しでも先を急ぐ必要のある今だから都合は良い。
「何故……ワシが敗北を……? 全く難解じゃわい……」
相手が、Aの存在に気が付かなかったのが救いだったのかもしれない。
彼女がゆっくりと歩み寄った所で、小さくごちた難怪は力尽き
紫の靄となって、消え去って行った。
そして難怪の向こう側で尚も動き続けていた
機械を見上げて、オロチはもう一度、構えを直す。
「……こいつがあの雲を発生させているのだったな。すぐに終わらせるぞ!!」
言い放った彼の首元に巻き付く竜が、目の前の機械に打撃を与えた。
衝撃を受けた機械はやがて不具合を起こし、ビリビリと
電気を放出しながら大爆発して──木端微塵になった所で、動きを止める。
この爆風をどうにかやり過ごしたAは、
粉々になったそれを見下ろしては小さく笑い。
「──流石、徹底的にやったな。これならまた動き出す心配もなさそうだ」
「…………礼には及ばないさ」
緊張を解いたオロチは、彼女の言葉を受けながらズレたマフラーの位置を戻す。
「それに、ウバウネを倒すまでは油断しない方が良い」
「……雲はまだ拡大し続けているな……他の皆は無事だろうか」
一息吐き、空を見上げたAの表情もまた曇る。
拡大し続けているという事は、他の場所ではまだ例の機械が
破壊されていない──怪魔を倒せていないという事と同義だ。
しかし、結束力を高めた彼らが無事でない筈はないだろう。
一先ず、雲の動きが止まるまで待つことにしたオロチが
同じく黒々とした空を見つめつつ、目を細める。
「……土蜘蛛殿は、私が久しく影オロチと再会した動揺を見て取り
一人で怪魔の討伐に向かわせなかった……」
二人で一体の怪魔に取りかかったから、こちらが早く終わっただけの話で
必ず彼らも、直に各地であの機械を壊してくれる。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
