第142話 四つの反応 ページ22
無情に言い放ったアエラスに対し、ケータが声を上げた。
Aは決して悪い人ではないのに、どうしてそうならなければならないのか。
そう言わんばかりの声だったが、アエラスはそれに反応せず。
「ほらほら、これからが大変になるんだよ。私に構っている場合かなあ?」
笑いながら肩をすくめて言った彼女の視線が、
A達の下から誰も居ない地面上へと移された。
……直後に、その場に紫の靄と共に一体の妖怪が訪れる。
「マスターニャーダじゃないですか!?」
厄怪との戦いで助言を与えてくれた者の姿に、
目を見開いたウィスパーが声を上げた。
彼には厄怪を倒す為だけに協力を仰いだはずだったが
一体どうしたというのかと驚いていると、直にニャーダ自身が答えを言い放つ。
「──ウバウネがついに動き始めた……
桜町が危ない……怪しい気配が集まろうとしておる」
「ウバウネと……後はキンとギン……そして厄怪か!」
「んにゃ、厄怪の気配は感じられん。
その代わり……更に大きな反応が、あと四つ……!」
見覚えのある限りではあの四体のみだったが、ニャーダはそれらを除き
更なる力を持った四体が桜町に現れたのだと告げた。
「あと四つ!? あの厄怪より強い怪魔が、まだそんなに居るって事ですか!?」
「…………──ぐう〜……」
「……って、やっぱり寝てるし!」
「お約束ニャン!」
奇抜な休眠をとるニャーダは、驚くウィスパーの問いに答えられずにいびきをかく。
最初こそは器用過ぎる寝方だと驚いていたケータやジバニャンも、
今となっては“ここで寝るのか”と言わんばかりにがっくりと肩を落としている。
それらの様子を見たアエラスは、ふと小さく笑うと
ニャーダが眠って話が止まっている内に、A達に声を投げた。
「──っふふ。そういう事らしいから、また相手を抑えるために頑張ってね」
彼女はそう言い終わるや否や、紫の靄に包まれて姿を消す。
傍らに居た影オロチが消えたのも、それとほとんど同時の事で
Aやオロチが止めようと声を上げる間もなく、二人の姿が見えなくなった。
「(…………アエラス……)」
Aには、まだ疑問が残る。
──一体、彼女は何のつもりでここに居るのだ。
少なくとも、自分に敵対心を抱いている事は確かだが
それは、ウバウネと対立する“自分達”にとっての敵だという事でもあるのか?
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
