第135話 ダイナミック砲丸投げ ページ15
〜･〜･〜
マスターニャーダから話を聞かされて、急いで平原の中へと戻ったケータ達。
同じ距離を駆けまわっては、同じだけの疲れが彼らに伸し掛かったが
怪魔の下に駆け付けた時、厄怪が余裕気な笑みを浮かべて彼らを迎え入れんとした。
「チュッチュッチュッ〜♪ 遅かったっチュね〜」
「──チッ……」
「無念……」
厄怪を制御していた二人は相手に圧倒されてしまったようで、
地面に膝をついては肩で大きく息をしていた。
「大ガマ……!? 土蜘蛛……!?」
「次はお前等の番だっチュ〜」
動けなくなってしまっている二人を、こちらが気に掛けている場合でもないようだ。
厄怪は瞬間移動の如く、ケータ達の目の前までやって来ていた。
すぐに彼の前に立ったAが守りの構えをとるが、
果たして相手の素早さに対応できるかどうか。
「うぅ……! どうしよう……?」
他にどうしようもなくて、とりあえずここまで走って来てしまったが
いざとなると、Aが言っていたように対抗策が思いつかなかった。
ケータは焦って思わず呟くが──その直後に、彼らの脳裏にある声が呼びかける。
『──ホースを使え……ホースを使うのだ』
「! ……この声……マスターニャーダ!? でも、ホースを使えって言われても……」
「しかししかし、最強の御方ですから……!」
この平釜平原まではついてこなかったニャーダの声。
例のホースを使えという声に、
ウィスパーは懐からそれを取り出してケータに差し出した。
「こんなホースなんかで、一体何が出来るって言うニャ!」
「ちょっ! やめてくださいよ! とても貴重な物かもしれないんですから!」
そんな物を渡されても、一体どうしろと……肩を竦めたケータの前では
ジバニャンがホースを取り上げてはブチ切れ、
慌てたウィスパーが取られたホースを取り返さんと掴み取り。
──こんな所で喧嘩をしている場合かとケータやケイゾウが呆れている所で
厄怪はそれらを見ては、指をさしながら笑っている。
「グググ……そ･ん･なに言うニャら〜……お前がナントカするニャ〜!」
「えっ!?」
ホースの端と端とを引っ張り合っていたジバニャンが告げた。
その瞬間、ウィスパーの顔つきが強張り──直後に
地面の上に立つ前者が、宙を浮く後者を砲丸投げの如く振り回し始めた。
「あ〜〜れ〜〜……」
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年8月1日 0時
