第48話 六十年の蓄積 ページ8
「だが、条件を満たす者はなかなか見つからず、一週間、一ヶ月、
一年……そして気がつけばどんどん妖気が身体に溜まって大きくなり……」
──いつの間にか六十年が過ぎ、デカニャンになっていた。
疑問符を浮かべるばかりのケータ達に説明を続けるフユニャンだが
彼の話は聞き手側にとってはあまりにぶっ飛んでいる。
「それ、どういう仕組み……!?」
「……俺はここに詰まって動けなくなったが、霊体として外に出て……
遠く離れたさくらニュータウンで、ついに君と出会ったんだ」
「じゃあ、さっきの御饅頭は……? ここに俺を呼ぼうとして?」
しかも“仕組み”についての自分の質問は無視したのか。
聞かないフリをしたのか。
内心で相手に小一時間ほど問い詰めたいのを必死に押し止めながら
落ち着いて聞くケータに──フユニャンがはにかむ。
「んニャ。アレはただ食べたかっただけだ」
「「「…………」」」
……そんな不純な動機なら、“すまなかった!”じゃ
きっと被害に遭った人々の怒りは静まらなかっただろう。
彼が人でなく妖怪だったのが救いだ──一同は一様に苦い思いを抱え込んだ。
「ハハハ……体がデカいもんだから、デッカくして食べたかったんだ」
「……でもさ、フユニャン。どーして俺を探してたの?」
「それは……ケイゾウを……、君と深い関係のある俺の友達を助けるためだ」
どうやらこの話の中心はケータにあるようで、A達はまず
ケータ自身が自らの疑問を解消するまで黙り込んでいるが、
彼の疑問は全員の疑問にも直結している。
「どういう事? その友達って……!?」
「……その友達というのは……」
最も気になっていた事をケータが聞いてくれたので、
A達は息を呑んでフユニャンの次の言葉を待った。が──
「──饅頭を食べた後で詳しく説明しよう!」
「「「…………」」」
──言わずもがな、全員が一気に脱力した。
「どれだけ御饅頭を食べたかったのよ……」
呆れたように笑うふぶき姫もふぶき姫で、
“確かにあの大きくなった御饅頭は魅力的だったけど”なんて呟くので
これにはAも、仕方がなさそうに肩を竦めて笑った。
一騒動を終えた彼らは、フユニャンが腹ごしらえをするのと同時に
身体を休ませる時間をとることになったのだ。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
