第45話 力試し ページ5
「そんな事より饅頭返せニャ〜ン!」
──元々ジバニャンのじゃないよ、お婆ちゃんのだよ。
口元を引きつらせたケータの脳裏には、あの巨大化してしまった饅頭が
この蔵の中へと消え去って行ってショックを受けていた祖母の姿が過った。
「どうやらバッ……カデカい妖怪が蔵にパンパンに詰まっているようでうぃす!」
「そうでふ〜。悪いんだけど、引っ張り出してもらえないでふかぁ〜……?」
「えぇ!?」
こんな巨大な妖怪からしてみれば密閉空間となってしまっている
蔵の中から、引っ張り出せというウィスパーと張本人に声を上げる。
「ここはやらねばならないでしょうね。話が先に進まなそうですから……」
流石に壊れやしないだろうかと思う訳だが、
相手も身動きが出来なければどうしようもないという事だろう。
はいはいとウィスパーに促されては、
仕方なくケータは目の前の何かを両手でつかんだ。
「──いくよ。せーの!」
後ろにウィスパーやジバニャンと続いて、A達はその横で押し出すのを手伝う。
ケータの合図で一気に両腕に力を込めると、それはまるで餅が伸びているのかと
思わざるを得ないほどに大きく伸び──やがて、蔵の中からすっぽりと飛び出す。
「「「うわあっ!!」」」
唐突な挙動に怯んだケータ達は、思いっきり後ろに倒れてしりもちをついた。
そんな彼らの目の前で、蔵の中から出て来た巨大な──例の猫が
蔵から解放された事で大きく一息を吐き、伸びをする。
「デ〜〜カニャ〜〜ァン……!」
「デカニャン!?」
巨大な猫、巨大な猫とばかり思っていたが見たまんまの名前か。
後ろに転んだケータは痛む箇所を摩りながら、ひっくり返った声を出した。
対して、眠たげに半目をしている巨大猫──デカニャンは
こちらが動揺しているのも構わず、話を推し進めていく。
「助けてくれてぇ〜ありがとでふ〜。でもそれはそれぇ〜。
──さあ、まずはその力、試させてもらうでふ〜!」
「…………え?」
──何故いきなりそんな事に。
ケータがそう反論する事も叶わず、デカニャンは早速自らの妖術を放った。
相手が起こした竜巻の術は、彼ら全員を巻き込んで辺りに吹き付ける。
「うわっ……!」
「何それ、いきなり〜っ!?」
よろめいたAは何とかその場に踏ん張ったが、
ふぶき姫は相手と距離をとって風から免れつつ不平を口にした。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
