第77話 救われた妖怪達 ページ37
更に戸惑ったケータが慌てて後に続こうとしたが、やはり小屋を出た後
ケイゾウの姿は──フユニャンの姿も──どこにも見えない。
「フユニャンもケイゾウも居ないね……」
自然ばかりが広がる辺りを見渡して、肩を落とすケータ。
その後に、ゆっくりと小屋の中から出て来たAが声を掛ける。
「きっとまだ遠くには行っていない筈だ。
探すのなら、根気強く辺りを見て回ってみたらどうかな」
「……うん……、そうだね」
彼女は、あくまでも焦った様子は見せなかった。
フユニャンの頼みは“ケイゾウを助けてほしい”という事だったが
妖怪ウォッチは無事に彼の手により作られて安心していたし、
何より今は他の手掛かりが少な過ぎたからだ。
「(……それに)」
彼を動かせるのは、フユニャンの言う
“少年ビート”である、ケータしか居なかっただろうから。
〜･〜･〜
「探したよ、フユニャン……」
「……すまない……。結局、ケイゾウとは話せなかったよ」
ケイゾウとフユニャンを探しに行って、
ケータ達は川の流れる橋の上で後者の方を見つけた。
彼は上手く事を運べなかった為に、すっかり意気消沈してしまっている。
「ケイゾウって、いっつもあんな感じなのニャン?」
「ああ。ケイゾウは友達を作ろうとしない。アイツと
友達になりたい妖怪は、沢山居るのにな……──コイツ等みたいに」
ジバニャンに問われて、答えるフユニャンは自らの手元を見つめていた。
ウィスパーがその手元を覗き込むのに、ケータ達も続く。
「それは……牛乳瓶の蓋ですか? 何か書いてあるようですが」
「牛乳瓶の蓋? へぇー、昔はこんな感じだったんだ〜」
「ケイゾウが助けた妖怪の事を書いたメモだ。
要するに、アイツの活躍した証さ……」
他にももう何枚かあるんだ、と話すフユニャンが見ていた
牛乳瓶の蓋に、大々的に書かれていたのが妖怪達の名前。
にんぎょ、くだん、ざしきわらし──……
「へぇ、これ全部ケイゾウが助けたんだ」
「ムムッ……! この蓋に書かれているのは、あの超メジャー妖怪の“河童”さん!?
──そんな方とも知り合いだったとは、ケイゾウさんって凄い方なんですね〜」
蓋に書かれた妖怪達の名前は、
単に人間達にとっても聞き覚えのあるものばかりだった。
フユニャンはその蓋を、ずっと大切に持っているのだという。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
