第75話 少年ビート ページ35
「そんなんで効いてしまうのですね……」
「なんかフツーニャ……」
手強い相手だと思っていただけに、ケイゾウから告げられた事実は
ウィスパーとジバニャンをすっかり気抜けさせていた。
──それ絶対怪魔が相手じゃなくても効くヤツだろ、と
あからさまに微妙な顔つきをしているAは思う訳だが。
「へへっ、この辛そうな唐辛子を使えばもっと怪魔をブッ倒せるかもな」
ケータからヤバネロを受け取ったケイゾウは随分とご機嫌な様子だ。
早速何やら道具を取り出して、かじりかけのそれを粉状にすりおろし始める。
「ところでケイゾウ。お前は今まで何をしていたんだ?」
「特訓。この森の奥でな」
一個ばかりの、そうサイズも大きくないヤバネロは容易に処理出来た。
フユニャンの問いに答えながらも、粉状になったものを手早く
謎の壺の(ケイゾウがそれを開けた途端に鼻がツンとした)中に放り込んでしまう。
「そりゃ、あのノートに書いてあった場所に行っても居ない訳だ……」
「……あのノート?」
顔を顰めさせながら鼻をつまんだケータが
がっくりとして呟いたのも聞き逃さなかったケイゾウの手が止まった。
「お前の代わりに、ケータが部品を取りに行ってくれたんだ」
「……俺は何も頼んでねぇぞ。貸しでも作ったつもりか?」
フユニャンの答えに、またもやツンとそっぽを向かれてしまう。
ノートを勝手に見た事もあってか、機嫌を損ねさせてしまったらしい。
「ケイゾウ、これは運命なんだ。お前にとってケータは……“少年ビート”だ!」
「ビート? ……んな訳ねえだろ!」
一度、ちらっとこちらの方を確認してから“あり得ない”と
フユニャンに声を上げて言った──我が祖父ながら失礼な人だとケータは思う。
「少年ビートは、ガッツ仮面がただ一人力を借りる存在。彼を支える敏腕助手だ」
そんな、彼等が好きなあの漫画で描かれる少年ビートは
ガッツ仮面に助けられたのをきっかけにガッツ仮面の相棒になった。
「ケイゾウ……お前は一度ケータを助けた。……という事は?」
「…………なるほど」
……何がなるほどなのかよくわからないが、
フユニャンの考えはケイゾウを深く納得させてくれたようだ。
彼は小さく頷いて改めてケータに向き直ると、
背後にある机を示しながらこう言い放った。
「──よし、お前等が集めて来たっていう部品、全部ここに出せ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
