第68話 内部潜入 ページ28
〜･〜･〜
鉄工所を回って、最後の扉から無事に内部へ入る事に成功した。
だが、彼らを待ち構えていたのは
視界いっぱいに広がる鉄機械──ではなくて。
「──うわ!? ナニこれ!? 煙のせいで、前が見えな……」
「……あ〜ら、いらっしゃい〜……。ウフフフ〜……」
視界を塗りつぶす真っ黒な煙と、一人の女性の声。
先ほどの男性が話して居た“妖怪”の存在が本当だとしたら、
この声の主が妖怪で間違いないのだろう。
「出ましたね! ケータ君! 妖怪ウォッチの出番でうぃす!」
「うん! ……あれ? 何も見えないんだけど……。誰か……居るの?」
ウィスパーに促され、すぐさま妖怪ウォッチのライトを構える。
──だがまたしても四方八方、どこを映しても何も見えない。
「おや? また見えないんですか? この妖怪の姿が……」
「うん、妖怪ウォッチの調子が悪いのかな……?」
「……いや、何か相手の様子がおかしい」
そもそも、その妖怪ウォッチが簡単に壊れてしまう筈はない。
ただ、天野家の家の前で怪魔にとりつかれていた男性と
今目の前にいる妖怪の気配が似ている気がすると、Aは言う。
「──ものは試しだ、ケータ。さっきの店主から貰ったビー玉を使ってみてくれ」
「う〜ん、本当に役に立つのかな〜……?」
改めて見てみても、おもいで屋の店主から渡されたビー玉は
何の変哲もないただのガラス球にしか見えなかった。
ケータはその事を訝しみながら、半信半疑でビー玉を目の前にかざす。
……すると、ビー玉が何かに反応して僅かに輝き──
透き通って見えるビー玉の向こうで、何かが見えた。
「──ハァ〜イ」
「……うわっ、本当に見えた!」
ビー玉越しにようやく姿を認められた後、驚いて片手を下ろした
ケータの目にはもう、容易に相手の様子が目に見える。
目の前でふわふわと宙に浮いていたのは、
耳に聞こえて来る通りの女性の姿をした妖怪だった。
「私はえんらえんら。煙の妖怪よ〜ん」
「ちょ! 勝手に自己紹介しないで! 説明パートは私の見せ場なんですから!」
「ウフフフ〜……悪いけど〜私はお仕事で忙しいの〜」
さらっとウィスパーの数少ない見せ場が奪われたところで、
怪しげに笑う女性の妖怪、えんらえんらが更にこう話を続ける。
「人間達を操るために、もっと煙を増やさないといけないから〜」
「──えっ! 人間達を操る!?」
「では、工場の皆さんの様子が変だったのは、貴方の仕業なんですね!?」
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
