第64話 おおもり神社 ページ24
「──そう言えば、ケイゾウがやけに
“友達”の存在を拒むのには、やっぱり何か理由があるのか?」
妖怪であるフユニャンですら友達と認めて居ない様子だった
彼の姿を思い出して、ふとAがフユニャンに問う。
するとフユニャンは途端に肩を落としつつ、浅く頷き。
「ああ。……だが、“少年ビート”になるケータにならきっと
あのケイゾウも、少しは心を開いてくれるんじゃないかと思うんだ」
少年ビート、ガッツ仮面の敏腕助手だとフユニャンが教えてくれた。
妖怪を知っていて、妖怪ウォッチを持つケータだからこそ
分かり合ってくれるんじゃないかと彼は願っているのだ。
──確かにそうなれば良いなと、Aも心の内で祈る。
〜･〜･〜
「ケイゾウのノートによると、
この辺りに妖怪ウォッチの部品となる物があるという事だったが……」
「……ざっと見た様子では、特に気になる物はないな」
おおもり神社の入り口に立って、周囲を見渡す二人。
しかし場所も場所だけあって、何も目ぼしい物など無い。
ただ、神社にある右手の狛犬に一匹の妖怪が
居座っているのを見つけて、Aがぽつりと呟いた。
「…………コマじろうだ」
Aやケータが両手で抱えあげられる程の大きさをした
黄と茶の虎のような色合いを持っているその姿は、見覚えがあった。
以前にコマさんと再会した彼女は、その弟であるコマじろうも知っていたのだ。
──だが、ここは過去の“桜町”で、相手は自分を知らないのが当然の事。
「君、少し聞きたいことがあるんだけれど……」
「うわっ!? な、何ズラか!?」
決意を固めてAが話しかけると、
酷く驚いたコマじろうが大きく肩を跳ねさせて反応する。
敢えてよそよそしい口調で語りかけたが、やはり相手は自分と初対面だと認識した。
「ケイゾウという子の事を知らないか?」
「けいぞう……? う〜ん。なんか知ってるような、
知らないような……──あっ、兄ちゃんの手紙!!」
コマじろうの言う“兄ちゃん”は十中八九、コマさんの事だ。
「この前、兄ちゃんから届いた手紙に、そんな名前が書いてあった気がするズラ!」
「良ければその手紙、見せてくれないか?」
「ズラ! ちょっと待っててくれズラ!」
続けてフユニャンが頼み込むと、大きく頷いたコマじろうは
背中に負っていた唐草模様の風呂敷の中身を探り始める。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
