第57話 “ケイゾウ” ページ17
──秘密基地というものだから当然の事だが、やはりそこは生活感には乏しい。
ただ、ここで遊んでいれば一日は容易に過ぎて行きそうなものだった。
「へぇ〜、ここが爺ちゃんの秘密基地か……」
内装を見渡しながら、ケータが感嘆の声を零す。
……彼らがそうして小屋の中を歩き回っていると、開いていた屋根の一角から
勢いよく一人の影がドスリと入り込み、彼らは驚かされる。
ただ、入り込んで来たのは先ほど家の前で会った少年で、
少年はフユニャンを強く睨みつけながら声を放った。
「フユニャン……! なんでここまでソイツ等を連れて来た……?」
「──外に居ては、怪魔に襲われる恐れがある。
そうは思わないか? “ケイゾウ”……」
少年に対する、落ち着いたフユニャンの返答に目を見開いたのは
二人の会話を聞いていたケータ達の方だ。
「ケイゾウ!? ではこの方が、ケータ君のお爺様……?」
「……お婆ちゃんの言ってた通りだ。爺ちゃんってカッコ良かったんだね!」
驚いて声を上げるウィスパーに、表情を輝かせて笑うケータ。
だが、一体何を言っているんだと言わんばかりに片眉を上げる少年──
ケイゾウは、頻りに首を捻ってケータの姿を見つめた。
「…………?」
「ケイゾウ。ケータはお前の孫なんだ」
「孫? なに言ってんだ? ──あっ……!
フユニャン……お前……まさか、怪魔のヤツらの石を使ったのか?」
「ああ。六十年後から連れて来たんだ。お前の助けになると思ってな」
困惑しているケイゾウにフユニャンが助け舟を入れると、
後者が例の“マキモド石”を使ったのだと察した前者の顔つきが強張る。
「…………助けなんて要らねえよ。俺は一人で怪魔と戦うんだ」
「あの〜、お友達のフユニャンの頼みで遥々、未来から来た私達の立場は……?」
「俺に友達は居ねぇ」
困ったように言ったウィスパーにも、ピシャリとはね付けるようにして
返しながら、小屋の出入り口へとズカズカと進み出た。
そうしてケイゾウが扉に手を掛ける直前で、ケータが慌てて声を放つ。
「じゃあ、フユニャンは? ケイゾウの友達じゃないの?」
「……友達じゃねえ」
ケイゾウがそれを答えるまでには、少々の間があったが
次にこちらを振り返った時の顔つきを見ても、険しいものでしかなかった。
その言動は、彼がどこか頑なになっているようにも見えるが
ケータ達に対して何か苛立っているようにも思える。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
