第54話 秘密基地へ? ページ14
フユニャンは辺りを確かめて、上手く行ったようだと安心した
顔つきを見せているが、ケータ達には然程周囲の変化がわからない。
彼らは、現代と全く変わらない場所の過去へ到着したのだ。
「ん〜? ホントにタイムスリップしたのかなあ〜?」
目の前には変わらずに蔵があったし、
その傍らには瓦屋根の大きな家が建っている。
そう首を捻っているケータの足下で、
必死にもがいたウィスパーがようやく自ら重荷から解放された。
「だーかーらー! 踏んでるっつってんでしょうがあぁっ!」
「この時代のケイゾウと会えば、過去へ来たのだとすぐにわかる。
──キミとケイゾウは驚くほどそっくりだからな」
ケータの姿を見つめるフユニャンは、そう言って小さく笑うと
目の前に立つ家を見上げながらこう続ける。
「恐らく、ケイゾウは家に居る筈だ」
「ちょ! 幾らなんでも無視はないんじゃござんせん!?」
ケータ達も同じく、現代と殆ど変わり映えしていない家を見やった。
ただ、六十年前と後では、その古めかしさは僅かに異なっていたが。
早速フユニャンの言う“ケイゾウ”に会って見ようか、と入り口に
視線を下げたところで、いつの間にかどこかへ行っていたAが出て来た。
「──ちょっと中を見て来たけど、誰も居ないようだったぞ。
その君の友達は、今は外に出て居るんじゃないのか?」
「何だって? そうか……だとしたら、秘密基地かもしれない」
「秘密基地……?」
“秘密基地”。それはAには少々聞き覚えのある響きだったが、
ケータはさっぱりと言うように疑問符を飛ばしている。
その傍らではウィスパーがショックを受けてガックリと項垂れていた。
「俺達の秘密の場所だ。この近くの森にあるから、行ってみよう」
これから案内をしよう、と切り出すフユニャンの後に
ケータ達は辺りの景色を見渡しながら続こうとする──と。
「──うぉおおおー!」
家の前から続く道の先から、一人の男性がふらふらと歩み込んで来た。
かと思えば、突然に耳をつんざく程の雄叫びを上げ、こちらと目を合わせる。
相手の大きな声に驚いたケータは、肩を竦めさせて後退り。
「ナニあれ!?」
「……“怪魔”にとりつかれた人間だ」
「怪魔!? それって何なの?」
普段と変わらずに冷静なままのフユニャンには、
相手の様子に見覚えがあるのだろう。
一方で、ケータは気を動転させたまま問いを投げている。
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作者名：フェイル | 作成日時：2015年6月25日 0時
