第53話 マキモドセ!! ページ13
「さぁ、ケータ。覚悟は良いな?」
「え!? これってもしかして、今すぐ行っちゃう感じなんですか!?」
早速、と言わんばかりに片手に意思を構えたフユニャンに
驚愕したウィスパーが狼狽える。
その傍らでケータも驚いて身を引いていたが、彼が何かを言う前に
手元の石を掲げたフユニャンが、何の変哲もないそれに妖力を込めた。
「行くゼ! マキモド石よ!! 時間をマ・キ・モ・ド・セ! ハアッ!!」
「うわっ!」
何やら言い出したかと思えば、手元の石を思いっきり地面に叩きつけ
そこから唐突に発生した煙に思わず声を上げてしまう。
過去へ向かおうとしているのだと瞬時に察したオロチ達は
咄嗟に付近から離れたが、Aはケータの近くを動き出さない。
「Aっ、気をつけて!」
「ご武運を!」
煙を中心に巻き起こった強風の中、
ふぶき姫と龍神の声が聞こえてそちらの方へと視線を向けた。
二人は祈るような目つきでこちらと視線を交えている。
また、最後にオロチと顔を見合わせて──両者が、互いに強く頷き合う。
「──うわぁあああああ!」
やがて、煙はAやケータ達を包み込み。
次に彼らの目の前に広がった景色に、前者は息を呑んだ。
……見覚えのある異空間。石の力を発動したフユニャンの背後では
歪な長針と短針が、反時計回りに時を刻んでいる。
「(……そうだ、あの二人組の老婆の時もそうだった……!!)」
意識を強制的に過去へと戻された、あの時の光景と全く同じだった。
そう理解した直後に、彼らの身体は豪風に吹き飛ばされる。
──次に我に返った時には、彼らは高く空中を浮いていて
混乱に巻き込まれたまま、重力に従って地面に落下して行く。
「ニャッ!」
「がふ!」
真っ先に顔面から地面に落ちたウィスパーの後に、
ジバニャンが全く同じ地点に身体を打ち付けた。
こうなってはもちろん、前者は思いっきり下敷きになり。
「とう!」
「ぐふ!」
「わっ!」
「げふ!」
抗議せんとウィスパーが頭を上げかけたところで、
フユニャンとケータもやってきて容赦のない三連打。
そこから少し離れたところで、Aは何も無い地面の上にうまく着地をしていた。
「──ここは……?」
「…………あの〜……」
「六十年前のケマモト村だ」
「…………踏んでます……」
「六十年前!?」
「…………踏んでます〜……」
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作者名:フェイル | 作成日時:2015年6月25日 0時