57話 ページ7
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仁王「お前は…本当にそいつのこと好きなんか…?」
菜々美「………」
仁王「俺は今でもお前のこと…」
菜々美「やめてください…!!
ゲームは…もう…疲れました…。
やっと次の恋に前向きになれたんです。
だからもう…私を惑わさないでください…!!」
菜々美ちゃんはそう言い捨てると部屋を飛び出した。
ゲームって…何…?
取り残された仁王先輩は宙を仰いで、ため息を漏らした。
仁王「バカじゃな…俺も…。…大切なものは失ってから気づく…か…」
そして、ポケットから髪ゴムを取り出して見つめると、さも大切そうに握りしめて胸に当てた。
初めて見る仁王先輩の思いつめたような顔…。
大切なものは失ってから気づくって…
あ……そっか……
あの二人……
ハッと気づいて顔を上げた瞬間、後ろの戸棚に頭を勢いよくぶつけた。
ゴツッ
イッター……
あまりの痛さにうずくまっていると、頭上から声が響いた。
仁王「何しとんじゃ、こんなとこで」
うわっ……仁王先輩……。
A「ごめんなさい……盗み聞きするつもりはなくて…。ここにも絆創膏取りに来ただけで…。
はっ!!!やばっ!時間!!!
先輩、ほんとにごめんなさい!!
これからすっごく大事な用があって…すみません!!失礼します!!」
目をパチクリさせて立ち尽くす仁王先輩を尻目に、私は部屋を後にした。
急いでキッチンに戻ると、柳生先輩はダイニングの椅子に座って本を読んでいた。
A「こんなに遅くなって、本当にごめんなさい…!!!」
柳生「大丈夫ですよ。洗い物ももうほとんど残っていませんでしたから」
柳生先輩は柔らかく微笑んだ。
この人は本当に紳士だなぁ……。
A「ありがとうございます…明日は倍頑張ります!」
柳生「クスクス、大丈夫って言ってるじゃないですか。本当に可愛い人ですね、あなたは」
A「え______...?」
今のは…空耳…?
柳生「っと、失礼。そう言えば、この後用事があるって言ってませんでしたか?」
A「あっ!!!」
慌てて時計に目をやる。
良かった…。ブン太先輩との待ち合わせ時間まで、あと5分ある。
今から急いで行けば間に合う。
パッと柳生先輩を見ると、先輩はあたたかい笑顔で言う。
柳生「行っておいで」
A「ありがとうございます!」
私は再び駆け出した。
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となみ - 彩さんの全作品、読ませていただきました。どの作品も、お互いを大切に想い合う気持ち・思いやりにあふれており、また常に前向きな姿勢が読んでいて心地よかったです。ブン太のお話、いつか続きが読めたら嬉しいです。これからも頑張ってください。 (10月11日 21時) (レス) @page26 id: e6430f453c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 彩さんこんばんは。返信遅れてしまいすみません。続きを書いてくださるなんて!とても嬉しいです!楽しみに待ってます!体に気をつけてください! (2022年2月4日 19時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - かるぴんさん» ありがとうございます!時間が空いてしまいましたが、続きを書いてみようかなって思います。 (2021年12月12日 11時) (レス) id: 0d6668a6df (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - とても素敵なお話です!続きがあったら読みたいです! (2021年5月16日 18時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 瑞稀さん» 瑞稀さん、嬉しいコメントありがとうございます!レスとんでもなく遅くなってごめんなさい(>_<) (2018年7月7日 23時) (レス) id: 64226139fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2015年7月30日 20時