67話 ページ17
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日誌と共に屋上に取り残された私は、しばらく呆然と立ち尽くしていた。
部長の言葉が信じられなくて…。
こんな厳しい現実を突きつけられた部長の気持ちを思うと苦しくて…。
あまりに突然のことで…。
思考回路がすっかり止まってしまった。
その後のことはあんまり覚えてない。
どうやって家にたどり着いたのかさえも、思い出せない。
ただぼんやりと部長の言葉を思い出しては涙して、朝を迎えてしまった。
朝になっちゃった…。
みんなは知ってるのかな…。
みんなはどうなっちゃうんだろう…。
部長は試合には出てなかったけど、そこにいるだけで、部長が部長であるだけで、みんな安心していたし、心の支えだった。
そんな部長が辞めるなんて知ったら、みんなのショックは私以上だ…絶対…。
私は心ここに在らずのまま授業を過ごし、呆然としたまま部室を訪れた。
部室に、一人、また一人と部員が入っては来るものの、誰一人喋らずうつむいたままベンチや床に座り込んでいる。
みんな聞いたんだろうな…。部長のこと。
こんな異様な雰囲気初めてだ…。
私もみんなにかける言葉が見つからなくて、部長から突き返された部誌を抱えたまま壁際に立ち尽くしていると、入り口から罵声が飛んできた。
真田「何してるんだ! 関東大会は近い。さっさと練習始めるぞ」
その一声で、みんなはばらばらとコートに向かう。
練習の様子を見ながら、薫先輩は言う。
薫「やっぱりこんなの堪えるね…。みんな全然集中できてない。覇気がないし…。精市の存在がどれだけ大きいか身に染みるな…」
A「そうですね…。あの…部長の病気、本当に治らないんでしょうか…」
薫「んー…私もお医者さんから直接聞いたわけじゃないから…。難しい病気だってことは聞いたけど…」
A「私…どうしても信じられなくて…」
薫「私も信じたくはないけど…。お医者さんが言ってるなら…」
部長は本当にお医者さんから直接聞いたんだろうか…。
私が信じられないのはただの願望?
それでもまだ希望を持っていたい。
全員揃って全国大会に行きたい。
帰り道もまた、重苦しい雰囲気が私たちを包んでいた。
A「先輩、赤也、ごめん。私、やっぱり部誌、部長に届けてくる」
赤也「え…でももう来るなって言われたんだろ?」
A「うん…でも、やっぱり行ってくる!」
私は先輩たちを背に走り始めた。
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となみ - 彩さんの全作品、読ませていただきました。どの作品も、お互いを大切に想い合う気持ち・思いやりにあふれており、また常に前向きな姿勢が読んでいて心地よかったです。ブン太のお話、いつか続きが読めたら嬉しいです。これからも頑張ってください。 (10月11日 21時) (レス) @page26 id: e6430f453c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 彩さんこんばんは。返信遅れてしまいすみません。続きを書いてくださるなんて!とても嬉しいです!楽しみに待ってます!体に気をつけてください! (2022年2月4日 19時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - かるぴんさん» ありがとうございます!時間が空いてしまいましたが、続きを書いてみようかなって思います。 (2021年12月12日 11時) (レス) id: 0d6668a6df (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - とても素敵なお話です!続きがあったら読みたいです! (2021年5月16日 18時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 瑞稀さん» 瑞稀さん、嬉しいコメントありがとうございます!レスとんでもなく遅くなってごめんなさい(>_<) (2018年7月7日 23時) (レス) id: 64226139fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2015年7月30日 20時