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____「Aちゃん、ちょっと。」



突然呼び出しを掛けたのは、総務部長。私はヘマでもしたのだろうか。心当たりがないまま緊張しながら、部長について行く。

私が所属するのは、総務部総務課。
但し、少し特殊なのが所謂受付嬢ってこと。勿論、なりたくてなった。だって、座ってるだけでここの社員さんと結婚出来るって専らの噂だったんだもん。
上場企業な上に、顔で採ってるんじゃないかって程レベルの高い容姿。高学歴。高身長。高収入。3高どころか4高!キャピッとしてた女子大生だった私はそれはもう、必死だった。

採用内定通知が届いた時は飛び跳ねて喜んだ。
配属も希望通りの受付業務。
もう人生薔薇色だって、本気で思ってた。


しかし待ち受けていた受付業務は激務だった。


兎に角朝は早い。
身形は小綺麗に。
メイクは崩れないように。
言葉遣いはそれはそれは言わずもがな。
わざと臭くない笑顔。
記憶力。
断る勇気。
トイレに行けない。
ずっと座りっぱなし。


入社してものの1ヶ月で「なにが受付嬢じゃー!!!!」って内心思ってた。だけど、私には適性があったみたいだった。少し慣れて来た初夏辺りから、私は聖徳太子にでもなったのかと思う程謎の能力を発揮していった。
一度は過去の自分を恨んだものの、受付嬢になってよかったと思える程仕事が楽しくなっていや。忙しければ忙しい程うれしい。

え?出会い?そんなの社員さんには食事に誘われまくりだけど、なかなかそうも行かない。
うちの会社は割とクリーンだけど、ピッタリ定時とはいかないし、私も朝が早いので待ってられないし、顔を浮腫ませるなんて御法度なので、お酒も飲めない。行けるとしても金曜日くらい。まだ運命の人には出会ってないかなー。なんて思っていたら、入社して半年。全くお声が掛からなくなった。なんで?

そうこうしているうちに年は暮れ、新年を迎えた。

そしてバレンタインデー!
一大イベント!となるはずが、渡す相手もおらず、総務課男性社員に市販の義理チョコを配り、同じ受付嬢仲間には手作りのチョコを贈った、のが今朝の話。



そして、今。私は部長の後ろを歩いているのである。



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作者名:ガヤキティ | 作成日時:2017年10月5日 22時

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