「＿＿＿＿の数だけ、」 (ページ2)

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この後に控えた自分たちの撮影のためにも前半組の見学にでも行こうかとスマホをソファへ向けて空中に放ったところで、唐突に投げられた行き場のないセリフ。

運悪く、俺のスマホは抱えられていた奴の足の甲あたりに着地したらしい。最後の力加減を間違えた。

「きょも？」

「…北斗の、スマホが」

「……………悪い」

見ていなかった樹が奴を振り返ると、咄嗟に顔を向けてしまった俺の視線の先、恨みがましげな声をあげながらも決してこちらを見ることなく薄い唇を尖らせて左足の甲を摩っている。

樹はあーあーなにやってんの、と呆れたような声をかけつつ縮こまる奴の頭を撫でている。

今回は俺が悪いのだけれど、樹は奴に少し過保護すぎると思う。

「ほら、北斗もわざとじゃないんだし」

「…そんなのは分かってる、」

「ならほら、ふたりともそんな険しい顔すんなって」

「え、」

樹の言葉に、未だ奴のすぐ傍に居座っている自分のスマホへ目を逸らしていた俺はそのすぐ上、先程は尖っていた唇に目を向けた。まだ尖っている。

そうじゃなくて、

「…………なに、」

「っえ、」

「俺の顔になんかついてる？」

「、あ、いやっ」

______ただ、俺のせいでお前が、俺の好きな表情になっていたから、…なんて。

「…………言えねー……」

「は？なんだよ言えよ、これから撮影なんだぞ」

「だからなんもついてねえよ」

「じゃあなにが言えねーの」

「それが言えねーんだってば」

やっと痛みがとれたのか、控え室の外がガヤガヤと五月蝿くなってきたのを聞いてなのか、奴がソファから立ち上がる。

手をついた位置にちょうど俺のスマホがあって、一瞬目を丸くしてからこちらに一歩二歩と近づいてきて、渡される。

軽口を叩きながら、俺の好きなあの表情のまま。

「………なんか、今日きょもほく仲良い？」

「は、この程度で？チョロいな」

「……だってよ、樹」

こうしてコメントを押し付けられていることから分かるだろうが、俺たちはいつも通りだ。

………*

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