第七話 ページ10
春季大会三回戦。
結果として、青道は11対1で永源を下した。
一也のツーランホームランや降谷のツーベースヒット。
川上と沢村のピッチングも良く、一点奪われたとは言え試合内容は最高だった。
他の球場では稲実対薬師とビッグカードで、正直初戦からこの二つがぶつかってくれて良かったと試合のログを見ながら思う。
鳴のピッチングの精度上がってるなとか、今のバッティング惜しかったな、なんて考えていると、隣から「あの...」と声をかけられた。
まだ一年生全員の名前と顔が一致しているわけではないけれど、彼は有名だから覚えている。
『由井...で合ってるわよね』
「はい、由井薫です!隣いいですか?」
そっと周りを見てみると、私の隣以外に空いている席がない。私が『どーぞ』と答えると、由井は礼儀正しく「失礼します」と腰を下ろした。
『...速いわね、食べるの。他の一年はまだ食べてるのに』
「少しでも早く先輩達に並びたいですから。そういえば、ずっと聞きたかったんですけど、相川先輩達 って...」
久しぶりの呼び方に、私は思わず顔を顰めた。
それに気付いた由井は話すのをやめ、戸惑った表情を見せる。
『Aでいいわ。二三年にはそう呼ぶよう頼んでるから』
「じゃあA先輩で。A先輩って、稲実の成宮鳴とバッテリー組んでましたよね」
『知ってたの?大して有名じゃないし、間宮シニアとはあまり試合したことなかったと思うけど』
「スタンドで見たことあったんです。同じキャッチャーとして、ずっと尊敬してたんですよ!」
そう話す由井の言葉は嘘に聞こえなくて。
私は気恥しさから『そう』と目を逸らして小さく返す事しか出来なかった。
一也ですら最初は覚えていなかったのに、一つ下の、しかも関わりのない別シニアの選手に認知されているとは思わなかった。
「A先輩、寮生活ですよね。もし迷惑じゃなければ、時間ある時に俺のキャッチング見てくれませんか?」
『私、大したアドバイスとか出来ないけど?』
「全然大丈夫です!」
そんな純粋な目で見られると、流石の私も断れず了承してしまった。
その光景を、当然アイツは良く思うわけなくて。
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まうふち(プロフ) - 自分自身受験生で、メンタル的にもモチベが無くてしんどくて息抜きに見にきました。昔大好きだったダイヤのAの作品を探した時主様の素敵な作品に出会って、いつまで経っても好きなんだなって思えました!忙しい時期だと思いますが、主様のペースでの更新待ってます。 (9月6日 23時) (レス) @page32 id: d0a3c1950d (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 名前さん» すっごい返信遅くなってしまってごめんなさい!濃厚接触者になったりと危うい時期もありましたが、一切体調を崩すこと無く元気にやってます(^^; これから車校が始まるのでまたノロノロになると思いますが、頑張って更新していきます (2023年2月7日 1時) (レス) id: 052b40ba30 (このIDを非表示/違反報告)
名前(プロフ) - お久しぶりです❀.(*´ω`*)❀.ずっと更新されていなかったので、ずっと心配でした😭体調は平気ですか?これからも体調には充分に気をつけて下さいね(^○^)応援しています📣 (2022年8月9日 20時) (レス) @page25 id: 38a2014fa3 (このIDを非表示/違反報告)
菜々子(プロフ) - めちゃくちゃ遅いですけどおかえりなさい!待ってました!無理せず頑張って下さい! (2022年3月7日 20時) (レス) @page17 id: 985800c53e (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - サナカンさん» そう言って貰えて嬉しいです!!がんばって更新していきますので見捨てないでくださると泣いて喜びます... (2022年1月8日 23時) (レス) id: 052b40ba30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜餅 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2020年4月26日 12時