第十七話 ページ22
「そのおにぎりはちょっと大き過ぎかな...?」
「...難しい」
試合から帰って来て、部員は早速自主錬に向かった。
私達は食堂でおにぎり作り中なのだが。
「さっきから嫌味?」
「嫌味じゃねーよ。おめーが良くなかったのは事実だしな」
今日の試合のログを流したテレビを前に言い争う二人を横目に見ながら、作ったおにぎりをトレーの上に並べる。
お互い反省しているのはいい事だが、どっちが悪いかなど言い争っても無駄でしかないだろうに。
「全部俺が!!」
「僕が!」
「はい、そこまで!」
睨み合う二人の間に渡辺が入り、打ち切るように手を叩く。
止めても相変わらずお互い睨んだままだが、少しずつみんなが集まり出したのでこのタイミングで渡辺が入って来たのは正解だっただろう。
一旦黙った二人から視線を外して、手の上にまだ温かいご飯を乗せる。
『...まだ大きいから、もっと量減らして。これくらい』
「はい...」
そういえば、貴子先輩も一年の頃はよく先輩マネに大き過ぎると注意されていたと教えてくれた。
あのしっかり者の貴子先輩もこんな風だったのだろうかとハンドボールの様なおにぎりを見てふと思った。
「御幸先輩、あとで部屋いってもいいですか?」
「...え?」
沢村がそんな事を言い出したのはミーティング後、みんなが室内練習場から出て行こうとした時だった。
「今日の試合のことで質問があります!」
「...質問?」
「じゃあ八時に行くんで!!」
呆気に取られている一也を無視して自分の言いたいことだけ言うと、さっさと室内練習場を出て行く。
「リードのこともっと知りたいって。さっきそう話してたよ」
みんなが沢村の様子に疑問を抱く中、渡辺がそう教えてくれた。
一也のリードを汲み取って投げられるようになりたい、と言ったそうだ。
私を含め、その場にいた全員が驚いていた。
あの沢村がここまで考えるようになったのかと。
「負けられねぇな...」
ぽつりと一也が呟く。
「負けられねぇよな.....俺達も」
そう言った一也の目は輝いていて、とても楽しそうだった。
その気持ちが移って、みんなの表情もやる気に満ちていく。
「そうやで!!俺達三年ここからが本番なんや。負けられへんねん!!もう一回甲子園に立つんや!!」
「近いから」
「いくでぇ甲子園。最終的に俺達が勝ぁ〜つ!!」
...何か、沢村みたいになってきたな。
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まうふち(プロフ) - 自分自身受験生で、メンタル的にもモチベが無くてしんどくて息抜きに見にきました。昔大好きだったダイヤのAの作品を探した時主様の素敵な作品に出会って、いつまで経っても好きなんだなって思えました!忙しい時期だと思いますが、主様のペースでの更新待ってます。 (9月6日 23時) (レス) @page32 id: d0a3c1950d (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 名前さん» すっごい返信遅くなってしまってごめんなさい!濃厚接触者になったりと危うい時期もありましたが、一切体調を崩すこと無く元気にやってます(^^; これから車校が始まるのでまたノロノロになると思いますが、頑張って更新していきます (2023年2月7日 1時) (レス) id: 052b40ba30 (このIDを非表示/違反報告)
名前(プロフ) - お久しぶりです❀.(*´ω`*)❀.ずっと更新されていなかったので、ずっと心配でした😭体調は平気ですか?これからも体調には充分に気をつけて下さいね(^○^)応援しています📣 (2022年8月9日 20時) (レス) @page25 id: 38a2014fa3 (このIDを非表示/違反報告)
菜々子(プロフ) - めちゃくちゃ遅いですけどおかえりなさい!待ってました!無理せず頑張って下さい! (2022年3月7日 20時) (レス) @page17 id: 985800c53e (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - サナカンさん» そう言って貰えて嬉しいです!!がんばって更新していきますので見捨てないでくださると泣いて喜びます... (2022年1月8日 23時) (レス) id: 052b40ba30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜餅 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2020年4月26日 12時