"通称"御幸の彼女兼愛されマネージャー【御幸一也】

第十五話 ページ20

市大と戦う準決勝。

スタンドの客の入りがこれまでの試合の比じゃない。

同じ西地区のライバルでどちらも強豪校となれば、私が他の高校に進学していたとしても見に行きたくなるようなビッグカードなのだから無理もないだろう。


一也が勝って青道が先攻。

交換したオーダー表を見ると、この間の試合と打順は変わっていないようだった。


審判の合図でベンチ前に待機していた両チームがホームに向かい合って整列する。



「礼！」

「「「しゃあすっ！！」」」



そんな選手の掛け声が一瞬静まり返った球場に響いた。




先頭倉持はセンターオーバーで二塁へ。

続いて東条がバントを決めて倉持を三塁へ送り、春市がフォアボールで出塁。

そして四番の一也が一二塁間を破り、青道が先制点を取った。

ここまででも順調だったけれど、さらに白州がライト前へ飛ばして春市を帰し、二点目を追加する。


横からだからコースまでははっきりとは分からないけれど、ボールが先攻しているから天久の調子が悪いのかもしれない。

と言っても、立ち上がりが心配なのはむしろこっちの方だ。


その心配は当たり、先頭打者を打ち取ったものの二人目はフォアボール。

三番にはレフト前へ運ばれ、四番のタッチアップでランナーは一三塁というピンチだった。

そこにプラスするようにフォアボールでランナーが出塁し、状況はツーアウト満塁に変わる。

その後のバッターはセンターフライで打ち取り、何とかピンチを切り抜けたものの、ここまで立ち上がりが悪いと不安しかない。


それは向こうも同じで、お互い投手が不調ながらも守備に助けられながら無失点で試合が進んで行く。

試合が動いたのは五回、天久の投球が安定してきた後の市大の攻撃だった。

第十六話→←第十四話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す