"通称"御幸の彼女兼愛されマネージャー【御幸一也】

第十三話 ページ18

準々決勝、対春日一。

この日の先発は沢村。


今日は初めから調子が良いようで、二回表の現時点では安定した投球が出来ている。


それに加え、レギュラー入りを果たした一年の結城が初めてスタメンに入った。

初打席は観客がホームランでも打ったかのようなどよめきを起こすほど豪快な三振だったけれど。


その後沢村はナンバーズを試し、実践でいきなりだったにも関わらず相手の打線を三者凡退で抑えた。


そんな絶好調な投手に応えるように続く青道打線。

この回に四点を取り、表を無失点で抑えた四回裏に二点を追加した。

続く五回は、途中投球が乱れツーアウト満塁のピンチを迎えたものの、ストレートで立て直しゼロを並べた。


六回からはエースである降谷が登板。

安定しているとは言えないが着実にアウトを取れているので、彼の中では悪くない。


そして無失点のまま迎えた七回裏。

試合を決めたのは、これまでずっと三振続きだった結城のツーランホームラン。

内容は同じだが結城先輩よりも四ヶ月早いそのホームランにより、サヨナラコールドで試合は幕を閉じた。



『...で、セカンドが取ってバッターはアウト。二塁ランナーは三塁に進んだから？』

「セカンドは4だから、バッターは4-3...あ、真ん中にワンアウトも」

「ランナーは七番バッターのお陰で進んだから、(7)ですか？」

『そう、正解』



部員が次の試合を見に行っている間、マネージャーは下で荷物番をするのが仕事。

いつもは道具の整理をしたり試合の振り返りをしたりしているけれど、最近は新しく入った一年生にスコアを教えている。



「やっぱAは教えるの上手いねー」

『一年生の覚えがいいだけよ』

「またまた、照れちゃって！」

『うるさい、照れてない』



じろり、と幸を軽く睨めば、隣にいた唯と一緒に「きゃー怖ーい」なんて言ってからかってくる。

二人がこんなだから、春乃と一年生二人の純粋さが身に染みる。



『...上、どうなってるかな』

第十四話→←第十二話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す