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控室に戻ってきた。
缶コーヒーを開けてソファにドカッと座った二宮さんは、くすくすと笑いながら私を見ている。
「南に対して緊張しすぎでしょ、面白すぎるわ」
『そ、そりゃ、緊張しますよ！』
「何に対してそんなに身構えてんのよ」
『えっ、というより、むしろ、数年ぶりの再会なんですよね！？あんなにナチュラルに談笑できるお二人にびっくりなんですけども！！』
「そんなもんでしょ。なに、俺と南が会って早々、再会の喜びを表して濃厚なディープキスでも繰り出すと思ってたの？」
『でぃっ…！？』
「冗談だわ！」
『そ、それくらいわかってます！』
「それに良かったね、南、Aさんのこと可愛いって褒めてたじゃない」
『それはお世辞ですよ…』
「元カレのマネージャーにお世辞言うほどアイツの性格、よくないよ(笑)」
さっきから、ズキズキする。
二宮さんが滝下さんのことについて当たり前のように話すことに、ズキズキしてる。心が？頭が？どこがズキズキしてるの？自分でもわからない。
「変わったって…、言ってたね、アイツ」
『え？』
二宮さんから笑顔が消えていて、また、はぁ、と深い溜め息をついた。
もしかしたら、あのときの冷たい滝下さんの雰囲気を、どこかで二宮さんも感じ取ったのかもしれない。
「俺のこと、"色々変わった"って、言ってた」
『たしかに、おっしゃってましたね…』
「でも、俺もちょっと思った。南こそ、変わったなって」
『…そうですか』
「人なんて、変わらない方がおかしいでしょ」
…俺も、南も、変わってないし、変わったんだろうね。気づかないうちに、お互い」
『二宮、さん？』
二宮さんは、ソファに寝転がると、目をつぶってしまった。
疲れてる、のかな…。
「Aさん」
『はい、』
「嫌な予感がすんの」
『…え？』
「わかんない、わかんないけど、すげぇざわざわする」
『二宮さん、大丈夫ですか…？』
やっぱり、なにか二宮さんの様子がおかしい。私もなにかざわざわとしてる気がする。
正体がわからない、何かが迫ってくるような…。
思わず、ソファにかけよって、だらりと脱力している二宮さんの手を握りしめた。
ぱちりと、二宮さんが目をあけた。
私の手を、握り返した。
「お願い、絶対、俺の味方でいて」
関わらないで、と、私に吐き捨てた二宮さんは、いつの間にか、どこかへ行ったのだろう。
これから起きることを、まだ私たちは知らない。
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作成日時：2017年5月29日 15時
