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私はひとり、自動販売機の前に立っていた。
二宮さん用にコーヒーを1本買って…、うーん、自分はどうしよう…水でいいかな…自動販売機とにらめっこをしていたら、ふとした拍子にさっき買ったコーヒーを落としてしまった。
『あっちゃー、』
慌てて転がっていく缶を追いかけると、廊下の先にいたひとりの女性がそれをさっと拾ってくれた。
『あっ！すいません！』
「いえ、大丈夫ですか？」
そのきれいな声に、ドキッとした。
だって…この声…、
私より少し高い位置にあるその顔を見上げる。
そう、コーヒーを拾ってくれたのは
『あ、ありがとう、ございます…』
「いえいえ、もしかして、映画関係者の方ですか？」
『えっと、あの』
「ふふっ、初めまして、滝下南です」
ふわっと笑った滝下さんは、とっても綺麗で…。
『は、初めまして…！』
「キャストの方、ですよね？」
『へっ！？え、いえ！あっ、すいません、違います！マネージャーです！』
「マネージャーさん！？あっ、ウソっ、ごめんなさい！可愛いからつい新人の女優さんかと…」
『かっ…！？』
そ、そんなの初めて言われた…。缶コーヒー片手にあわあわとしている私をみてクスっと笑う滝下さん。いや、ちょっと…この人…可愛すぎる…。
「どなたのマネージャーさんなんですか？」
…し、しまった。
なぜだかそう思ってしまった。
『えー…、っと、私、嵐の二宮のマネージャーのAと申します。今回は、よろしくお願い致します』
私が小さく頭を下げてから顔をあげると、滝下さんは、大きな目が落ちちゃうんじゃないかと思うくらい、さらに大きく目を広げて驚いた表情をしていた。
「かず、の、マネージャーさん…、そう…
九条さんは、お元気ですか？」
その瞬間、滝下さんの空気感が、急に変わった。
柔らかくて、ふわりとしていた表情が、冷たくて、まるで見えない薄いフィルターが私との間に隔たりを作ったかのように。
『あっ、九条は…私がマネージャーについた頃にはすでに退職していまして、』
「退職？そう…、辞めちゃったのね、残念だわ…。すごく、素敵なマネージャーさんだと思っていたのに」
『あっ、あの』
また、そのとき、私の周りの空気が急に変わった。
まるで、周りの酸素が、一瞬で無くなったんじゃないかと思うほどに。
私は、息苦しくなった。
「南、久しぶり」
優しく私の肩に置かれた二宮さんの手が、酷く重く感じられた。
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作成日時：2017年5月29日 15時
