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「…だと、思っています。
そして、支えてくれた、スタッフにも、感謝しています」
スピーチの、途中の、何気ない言葉のひとつだった。
だけど、その瞬間だけ、優しくこっちを見てくれたのはきっと私の気のせいじゃない。
スピーチも終わり、トロフィーを持ち、ステージを降りる、そのとき。
一瞬だけ、私をみて、小さく、でも、声に出さずに
「(泣くな、ばーか)」
と微笑みながら口を動かした。
そういう自分だって、目が潤んでるくせに…。
ステージを降りていく二宮さんを見て、私は舞台袖から奥へ戻る。モニターの近くにいた笹沢さんが涙を拭いながら「化粧、直してこい」と笑った。
−−−−−
授賞式は滞りなく、終了した。
授賞式後の立食ディナーでは、沢山の人に囲まれて、照れくさそうに笑う二宮さんの姿を遠巻きから見つめた。二宮さんを控え室のホテルの部屋に一旦送って、また笹沢さんと2人、挨拶回りをしなければならない。
部屋のドアを開けた途端、蝶ネクタイを近くのテーブルの上に投げ捨てると「あーー！」と声を出して二宮さんはベッドに身体を放り出した。
『スーツ、皺になりますよ』
「なに、これから挨拶回りなの」
『…最後の、仕事です』
「…そっか、」
ベッドから身体を起こすと、和也さんは両手を広げてふんわり笑った。
「じゃ、ちょっとだけ、きて」
私は、迷わず、和也さんに抱きついた。
「ささやんに頼んで、今日はこの部屋に泊まれるようにしてもらったから。最後のオシゴト、終わるまでここで待ってるよ。だから、早く戻ってきてね？」
『…はい、』
ちょっと名残惜しい気持ちで和也さんから離れると、
もう一度、抱き締められた。
「ありがと、ほんとに。ずっと、ちゃんと、俺のそばに居てくれて」
『こちらこそ、最後に、こんな素敵な景色見せてもらえて、感謝しか、ないです…』
「アナタのお陰で、獲れた賞だよ？」
『それは大袈裟、です』
「だって、Aのために、頑張ったんだもん。大袈裟じゃないよ。Aがいたから、Aと一緒だったから、俺は頑張ったし、頑張れた」
和也さんが、私の頬を両手で包んだ。あったかい。
「Aに、俺のマネージャーで良かったって、心から思って欲しかったから」
もう、せっかくメイク直ししたのに…
涙が、止まらない。
『和也さんの、マネージャーで、良かったです…』
貴方の隣で、貴方の近くで、いられたことが、心から嬉しい。
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作成日時：2017年5月29日 15時
