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日本映画賞授賞式当日は、奇しくも、私が二宮さんのマネージャーとして働く、最終日だった。
本当はもう少し長いはずだったんだけど、有給消化も考えると、この日が、最後。
最後の日が、授賞式だなんて、なんて、マネージャー冥利に尽きるんだろう。
少し早起きして、美容室で髪もセットしてもらった。
胸には、黄色いブローチをつけた。
これで最後か、と思いながら、二宮さんを迎えに行く。
二宮さんがいつもどおりの服装でくぁぁ、と眠たそうにあくびしながらマンションから出てきた。
「おはよ」
『おはようございます、あれ？スーツじゃないんですか？』
「んー、あっちで着替える。ささやんが持ってくるって」
『了解です、じゃあホテル向かいますね』
エンジンをかけようとしたら「待って」と横から声がした。
二宮さんが、後部座席から少しだけ身を乗り出していた。
「ん、すげー綺麗。車乗った時、ドキッとしちゃった」
ちゅっ、と私の頬にキスをした。
『い、行きますよっ』
「照れてるぅ〜」
『運転が乱れますよ！！』
「それは困るな」
−−−−−
会場の控え室に着くと、珍しく三つ揃えのスーツに身を包んだ笹沢さんがいた。さすが、事務所内でもダンディおじさまと名高い笹沢さん。めちゃくちゃ似合ってる。
「あはははは！ささやんめっちゃ決まってんね！」
「バカヤロー！お前の晴れ舞台だから決めてきてんだろうが！！」
「別に俺が最優秀獲るわけじゃないんだからさぁ」
「そんなのわかんないだろ！俺はお前が獲ると思ってるぞ！」
「えー、ないって」
二宮さんはノミネートが決まったときから「記念だよね、記念。別に俺が最優秀なわけないもん」と楽観的。緊張感がまったくないところ、らしいなぁと思っていると、楽屋の扉をノックする音がした。
「失礼します、」
「お、久しぶり」
「お久しぶりです、笹沢さん！」
そこには、綺麗な着物を来た、南さんが立っていた。
『わぁ、綺麗…』
「ほんと！？ありがとう！旦那が買ってくれたの！」
『えっ！？お着物買ってくださったんですか！？すごい！！』
「だってお前、コイツの旦那、めちゃくちゃ稼いでるからな」
「いや、かずの方が稼いでるでしょ？
あれ、Aちゃん、今日すごい可愛い！えー！なんでなんで！」
『え、あ、』
「うるさい、はしゃぐな。もともと可愛いの」
「きゃ〜！惚気だぁ〜！」
「…もう、めんどくせぇわ！ささやん、南を追い出して！」
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作成日時：2017年5月29日 15時
