７９［N side］ ページ38
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「ささやん、引き継ぎっていつからなの？」
「あぁ〜、来年入ってからだなぁ〜、年明けの会議で次が決まるしな」
『引き続きのノート、それまでに作っておきます』
「おぉ〜よろしく」
「そのノート俺が預かっとく『絶対ダメです！二宮さん捨てるでしょ！』
「ちぇっ」
「頼むからもう人材減らさないでくれよ二宮〜」
「へいへい、わかりましたよ」
Aの退職を聞いて、1番泣いたのは何故か相葉さんだった。
いままでのお礼って言って翔さんがオシャレなディフューザーを、潤くんは可愛いスニーカーをプレゼントしてた。
最近あんまりやる気がねぇから絵はおやすみ〜とか言っていたリーダーがすごい早さでAの似顔絵を描いて持ってきた。(「前にいつか描いてくださいねって言われてたし」とかヘラヘラしてたから思いっきりケツ叩いたらすげぇ不機嫌になってた)
1日ずつ、Aが俺のそばから去っていく日が近づいてくる。
『二宮さん！二宮さん！』
毎日は、否が応でも過ぎていく。
『二宮さん！』
俺は、
『も、ちょっと、和也さん！聞いてますか！』
「…ん、？」
『ノミネートされましたよ！！』
「…は？なんの？」
『日本映画主演男優賞です！』
「…誰が？」
『二宮さんがですよ！』
「…え？俺が？」
『はいっ！』
「まじか…」
『ど、どうしよ、えーっとまず報告をしないと…えーっと』
「……っんはは、」
『…何笑ってるんですか』
「いやぁ、すげぇ焦ってるアナタみることあんまりないから」
『あっ、当たり前じゃないですかぁ！！
そうだ、スケジュール！授賞式のスケジュールあけないと…あと、連絡を…』
そうか、授賞式あるのか。
なんだか大慌てしているAを見てたら、なぜか実感がわかなくて。
授賞式かぁ…スーツ買わなきゃいけないのかな…
去年、ぼんやりと、俺もあの場に立ちたいと、考えた。
今年、南との共演作が決まった時に、思った。
もしかしたら、この作品で。
いや、余計なことは考えないで、とにかく全力を尽くそう。
…でも、もし、
俺の頑張りで、Aを授賞式に連れていけたら。
Aのことだから、泣いちゃうのかな、また。
「Aちゃん、」
『…っ、な、なんですか、急に』
「Aちゃんも、授賞式用にとびっきり可愛いドレス用意しないとね？」
ふざけてウインクしてみたら、
Aは顔を真っ赤にして、ドレス…と呟いた。
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作成日時：2017年5月29日 15時
