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映画の宣伝活動も一通り終了して、二宮さんも、そして私も、久しぶりに連休というものをいただけた。昨日も何事もなく、レギュラーの撮影を終えて、いつもどおりに二宮さんを家に送り届けて。事務所に戻って、事務仕事こなして。1日が終わって。
久しぶりに、目覚ましをかけずに、朝を迎えた。
スマホをみると、そこにはたった一言。
昨日の深夜に送られてきていた、
和也さんからのメッセージが表示されていた。
”会いたい”
身体の内側の、奥が、ギュッと締め付けられた気がした。
私の手は勝手に和也さんへ電話を鳴らしていた。
「もしもし」
『おはようございます』
「うん、おはよ」
『…今から、行っていいですか？』
数秒の沈黙の後、優しい和也さんの声が聞こえた。
「うん、おいで。待ってるから」
−−−−−
和也さんの部屋に入って、あのときみたいにソファに座ると、そっと近くに和也さんも座った。
キャラメル色した瞳が、いつもよりまっすぐに私を見ていた。
「俺に、言いたいこと、あるでしょ」
『…はい、』
「そのこと、聞く前に。
俺からちょっとだけ話してもいい？」
『はい』
ふぅ、と小さく息をついた和也さんは、こてん、と私の肩に頭を乗せた。
「たぶん、Aが思ってる以上に、俺はAのことが好きなんだと思うの。だからね、Aが何を考えてたって、俺は多分、それを肯定するし、受け入れる。
Aが幸せだなぁって、笑っていられるなら、どんなことでも俺は味方になる」
初めて、二宮さんに出会ったときの私に言っても信じられないくらいに、
和也さんは優しくて、あったかい。
『あの、私、』
「うん」
『会社を、辞めることに、なりました』
「…うん」
自分でも気づかないうちに、自分の頬へ溢れた雫は、
そっと和也さんの唇に吸い込まれた。
『笹沢さんに、辞表を受け取ってもらいました。
来年の春に、二宮さんのマネージャーを、』
涙が、止まらなくなった。
初めて、二宮さんに会った時、心の中に溢れた不安。
二宮さんの、カメラが回った瞬間の眼差し。
入った時に、あったかい言葉が飛び交う楽屋。
そばにいてほしいと、心に残った二宮さんからの言葉。
笹沢さんからの少し強めな手のひらに込められた、エール。
『マネージャーを、辞めます』
もっと、貴方の、そばにいたい。
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作成日時：2017年5月29日 15時
