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57.
今日はクランクイン。
穏やかな日差しの中の海辺。
ありがちっちゃありがちの、カップルが仲良くデートしてるシーン。
つまり、二宮さんと滝下さんが、仲睦まじくデートするシーンからのスタート。そう、よりによって！！そんなシーンからスタートなんです！！
なんて、私が言えるわけもない。
ロケ隊から少し離れたところでぼんやり見守ることにした私は、テントのある日陰を離れ、日向に立っていた。
監督から最初の指示が入る。
「まず、2人で手を繋いであそこからぐーっとあっち側までおしゃべりとかしながら歩いて欲しいんだ」
「「はい」」
「まぁ、回想シーンの予定だから、話し声は別ゼリフで隠れると思って、好きに会話してて構わないから。リハとかなしで、そのまますぐ本番ね。歩いてもらうだけだし。
あー、ただ、そうだなぁ、付き合って5〜6ヶ月位の空気感は出してほしいなぁ〜。あっ、マイクは入れるからあんまり聞かれたらまずい話はしないでよ〜？」
「あははっ、はい、分かりました」
二宮さんは笑って返事をする。隣で滝下さんも微笑んでいる。
うーん。楽しそう。凄く楽しそう。良い事なんだけどね、うん。
「じゃ、向こうのバミリまで案内します」
助監督さんに連れられて二宮さんたちは海の近くへと向かっていった。
「あ、マネージャーさんも良かったら、そんな日向じゃなくてこっちの日陰にどうぞ！」
『あっ、すいません、ありがとうございます…』
テントの中に入ると、「よかったら！」とマイクの音声が聞こえるヘッドホンも渡された。うっ…、き、聞きたくない…。別に断ればいいんだけど何故か断れずにヘッドホンをつける。
耳元に助監督さんの声が聞こえてきた。
「では、ここから海に沿って監督のカットかかるまで向こうにゆっくり歩いてください」
「了解です」
「はい」
助監督さんがこっちに戻ってくるのを見て、監督の大きな声が響く。
「じゃあ！ニノくん！みなみちゃん！いくぞ！！」
監督からの声に遠くの二人が手を振って応える。
「よぉおおーーい！！スタート！！」
この映画、最初の、用意スタートの声が響く。
監督の大きな「よぉおおーい！」のタイミング、さっきまでこっちを向いていた2人がふっと正面を向いた。
その瞬間、本当にまったく、何の違和感もなく、二宮さんはさらりと滝下さんの手をとった。
「スタート」の瞬間、この遠い距離でもわかる。
確実に2人の雰囲気は恋人同士の甘い、それだった。
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作成日時：2017年5月29日 15時
