２８ [Both side] ページ31
28.
私は思わず寝室を飛び出してしまった。
ツムギと二宮さんが驚いた顔でこちらを見上げる
『あ、えーっと…』
「A、起きてたの…？」
『ちょっと、前に…ごめん』
「…ううん、こっちこそごめん。勝手に、話しちゃって」
『二宮さん』
「…なに」
『続き、教えてください』
「A、ちょっと」
『ツムギ、いいの。私、聞きたい。
それに、絶対におかしいですよね。私いままで"九条さん"なんて方の名前すら聞いたことないです。どうして、九条さんは今は二宮さんのマネージャーじゃないんですか？』
私の質問に、二宮さんは深い溜め息をついた。ボソボソと話し始めた二宮さんは、私が初めてあの嵐の楽屋に挨拶に行ったときのような、少しトゲトゲした空気感を纏った。
「俺だってそう思うよ、どうしてきゅうくんは今いないんだろうって」
−−−−−−−−−−−−−−
会議室に飛び込んだ俺ときゅうくんに驚いた、そこにいた"男"は、女の子を思い切り突き飛ばして逃げようとした。俺は女の子に駆け寄って、きゅうくんは"男"を押さえ込んだ。
女の子は突き飛ばされた拍子に頭を打ち付けて、気を失ってた。
きゅうくんは、押さえ込んだ"男"の顔をみて、慌てて手を離した。その瞬間に男は走って逃げていった。俺も少しだけ顔が見えたんだけど、知らないやつだと思った。
「ニノ、その女性は僕が預るから。今日はタクシーで帰ってもらえるかな」
「きゅうくん、さっきのやつ逃げたけど大丈夫なのかよ…」
「ニノ、帰るんだ」
「…わかった」
次の日、きゅうくんは俺のマネージャーから外れることになったとささやんから報告を受けた。もちろん俺の結婚の話なんておじゃんになったし、ささやんは元々、俺の交際には反対だったから、彼女とも別れた。
ささやんには、女の子の1件は解決してるから気にするなって言われた。もちろん、誰にも言うなって口止めもね。
その数ヶ月後、きゅうくんが会社を辞める日に、あの日以来初めて俺のところにやってきた。
きゅうくんは、もともと少しふっくらした体型だったのに、見る影もなくゲッソリ痩せてて、俺にひたすら謝ってきた。
「ごめん、ニノ」
「何に対してのごめんなの」
「急に、辞めることになって」
「は？意味分かんないんだけど。きゅうくんが辞めるところで俺に影響でないよね？だって今は俺のマネージャーじゃないんだから」
「…そう、だな」
俺はきゅうくんに裏切られたという思いしかなかった。
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作成日時：2016年4月25日 20時
