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18.
辛くたって悲しくたって、今日は終わるし、明日は来る。泣きたくたって逃げ出したくたって、仕事はなくならない。
重い足取りで向かった撮影現場は私がいなくても当たり前に忙しなく動いていた。主演俳優とはいえ、スタッフが必死に考えたスケジュールを変えさせたのだ。私と笹沢さん、二宮さんの3人で各部署にお詫びをするところから今日の私の仕事は始まった。
午前、お休みをいただいた私はただひたすら眠ったあとに、少しだけ友達と電話をして、頬をパシンと叩いて撮影所へと向かった。
「俺はアイツから何も聞いてない、だが、お前ら2人で話したいこともあるのも分かる。だが！！！今はとにかく頭を下げるぞ、時間なら後で俺が作ってやる」
あぁ、本当に笹沢さんが上司でよかったと今、心から思ってます。この間はセクハラとか言ってごめんなさい。午前中の仕事、放り投げてごめんなさい。いっぱいの感謝を込めて『はい！』と返事をした。
「次、30分後にシーン80のドライからでーす！」
スタッフさんの声がスタジオに響く。慌てて二宮さんの元に駆け寄る。
『すいません、今日の取材で入ってる媒体用に向こうで少しだけグラビアを「あぁ、それはもう少し後にしてもらった」
笹沢さんが私の声を遮るように言った。
『えっ』
「15分、お前らに時間をやる。ちゃんと話つけろ。Aは顔がこわばりすぎだ、他のスタッフ心配してるぞ。二宮、お前は今朝も行ったけどスタンバイ中の目つきが悪い。ここにいる女性スタッフがビビってんだろうがバカ」
そう言ったあとふんわりと私と二宮さんに笑いかけた笹沢さんは、きっともう、全部お見通しなのだろう。
「2人とも、その顔ちゃんと人前に出れる表情にしてから戻ってこいよ？」
−−−−−−−−−−−
楽屋で、2人。気まずい…とても…気まずい…空気が、重い。
二宮さんがセットされた頭を崩さないようにぽりぽりと小さく掻いてから、ボソリと話しはじめた。
「……寝れなかった」
『あ、はい…なんとなく、そうなのかなって、思ってました』
「たぶん、初めてだった」
さっきから二宮さんの話す言葉が、主語とか抜けてて、分かりにくい。本当の二宮さんは、テレビの前のようなおしゃべりな人なんかじゃなくて、こんな、ぶっきらぼうな人なんだろうなって気づいたのはマネージャーになって割とすぐだった。
「拒否、されたの」
『…あー、』
「すっげー考えた。だから『大丈夫です』
「…は？」
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作成日時：2016年4月25日 20時
